最終年度はナノハイブリッドキャパシタ負極材料としてTiO2(B)とカーボンナノファイバー(CNF)複合体の長期サイクル時の容量劣化の原因特定とその抑制方法について検討した。サイクル劣化は1000サイクルまでは徐々に進行したが、その後劣化が加速した。まず5000サイクル後の劣化試料を用いた透過型電子顕微鏡観察の結果、ナノ結晶TiO2(B)の結晶性の劣化は見られなかったが、TiO2(B)全体を被覆する表面固体皮膜(SEI)が見られた。このSEIについて成分分析したところ、サイクル初期には結晶性のフッ化リチウム(LiF)や炭酸リチウム(Li2CO3)が表面に生成し、その後高分子状のアルキル炭酸リチウムが生成することを確かめた。また、電気化学インピーダンス測定の結果から約700サイクル以上で電極―固体界面抵抗が増加することがわかった。結晶性LiFやLi2CO3は界面抵抗への影響は小さいと考えられる。したがって、サイクル劣化の要因は電解液分解によるアルキル炭酸リチウムが電極を被覆し、Liイオン拡散を阻害するためと考えられた。劣化の抑制方法として、ビニレンカーボネートを添加することを試みたが効果は殆ど見られなかった。現在は活性炭を正極に用いてフルセルを作製し、実用セルと同様の条件下でのサイクル特性を調べている。 本研究の成果として既に実用化を試みているチタン酸リチウム(Li4Ti5O12;LTO)/CNF複合体の代替材料としてTiO2(B)をナノサイズ化およびCNFへの高分散担持による複合化を試みた。その結果、水溶性チタン錯体を経由し、水熱合成と独自技術である超遠心下ナノハイブリッド技術(UC処理)を組み合わせることでTiO2(B)/CNF複合体の作製に成功した。本複合体は高電流密度時でもLTO/CNF複合体を超える容量を発現し、ナノハイブリッドキャパシタのエネルギー密度を高めることが可能であり、さらなる市場展開が図れる材料であることがわかった。
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