研究課題/領域番号 |
24550209
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
荻野 賢司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10251589)
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キーワード | ブロック共重合体 / 有機EL素子 / 連結部位 / 自己組織化 / 多機能多相系 |
研究概要 |
本研究では、接合部位に発光性単位を配置した正孔輸送性部位と電子輸送部位からなる多機能性ブロック共重合体し、有機電界発光(EL)素子へ展開することを目的としている。平成25年度は、平成24年度に合成手法を確立したブロック共重合体のうち、電子輸送部位がビニル重合体(原子移動型ラジカル重合で合成したもの)については、EL特性が芳しくなかったため、新しい分子設計を検討した。また、C-Nカップリング重合と鈴木-宮浦カップリング重合を組み合わせた方法については、組成、分子量、分子量分布等の一次構造を制御するために合成方法をさらに検討した。 まず、正孔輸送部位にはC-Nカップリング重合により合成可能なポリトリェニルアミンを、電子輸送部位にはビニル重合(原子移動型ラジカル重合)により合成可能なポリオキサジアゾールからなり、接合部に蛍光色素であるフェノチアジン部位を配置したブロック共重合体については有機EL素子を試作したが発光特性が芳しくなかった。そのため、平成25年度は発光部位をベンゾチアジアゾール誘導体に変更し、合成を検討した。やや煩雑な合成経路をたどるため、最終的なブロック共重合体の合成には至らなかった。 C-Nカップリング重合と鈴木-宮浦カップリング重合を組み合わせた方法については、平成24年度に合成が確認でき、予備的な検討から予想通りの緑色発光素子を作製することができた。しかしながらC-Nカップリング重合では反応の制御が困難で組成、分子量、分子量分布がコントロールできなかった。薄膜内のより明確な相分離構造の構築には、これらの制御が不可欠と考え、反応条件を最適化した。自己縮合型のA-B型モノマーのC-Nカップリング重合において、重合溶媒、開始剤の種類と量、重合温度、配位子の種類と量などを検討したところ、収率が高く分子量分布の狭いポリマーを与える系を見つけることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
24年度に合成したブロック共重合体のEL特性があまりよくなく、分子設計の変更となったため、合成計画が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
基板との相互作用、空気界面との相互作用などを考慮しつつ、分子量、化学組成、発光部位の構造など高分子の構造最適化を行う。その後、ブロック共重合体または対応する単独共重合体/ブロック共重合体の薄膜の形態制御を行い、正孔輸送成分が陽極側に、電子輸送成分が陰極側に偏在し、かつ界面に発光部位が配置された疑似的な積層構造を与える作製条件を見出す。膜厚が80-100 nm程度の薄膜作製時の溶媒の種類や濃度、単独重合体の添加量、後処理(熱アニール、溶媒アニールなど)の条件と薄膜の形態との関連を検討する。ブロック共重合体のドメインが10-20 nm程度の形態を与えることが予想できるが、単独重合体を添加していくことでドメインサイズが大きくなり理想的な50 nm程度のドメインサイズで、かつ基板に対して平行に配列したラメラの形態となることが期待できる。形態観察は透過型電子顕微鏡を用いる。 上記の薄膜を活性層として用いた有機EL素子を作製し、電流-電圧特性、発光特性(最高輝度、発光効率)などを測定し材料の分子構造、薄膜の高次構造との関連を明らかとし、高効率素子のための材料設計、作製プロセスの指針を示す。測定には研究室現有の装置、設備が利用可能である。
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