• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

高速動作有機CMOS回路の実現に向けた有機トランジスタの基盤技術開発

研究課題

研究課題/領域番号 24550211
研究種目

基盤研究(C)

研究機関神戸大学

研究代表者

北村 雅季  神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10345142)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード有機トランジスタ / 有機半導体 / 単分子膜 / 電極表面修飾 / 界面制御
研究概要

有機薄膜トランジスタは低温プロセスで作製できフレキブルデバイスへの応用が可能である.さらに移動度 5 cm^2/Vsを超えるPMOS,NMOSが実現されておりフレキシブル基板上への有機CMOS回路の実現が期待できる.本研究では,MHzオーダで高速動作する有機CMOS集積回路の実現に向けた基盤技術開発,特に,有機・無機界面制御に取り組んでいる.
平成24年度は,高移動度材料として知られるアルキル鎖を側鎖にもつジナフトチエノチオフェン(Cn-DNTT)を中心に有機PMOSについて,低コンタクト抵抗を実現するための電極構造についての研究を進めた.トランジスタ構造は短チャネル化が容易なボトムコンタクト構造とした.電極材料としては仕事関数が比較的大きい金もしくはプラチナを用いた.これらの電極について,さらに仕事関数を大きくするため単分子膜で電極表面を修飾した.仕事関数を実測したところ表面修飾したプラチナ電極が最も大きな仕事関数を示した.これらの電極をCn-DNTTトランジスタに用いたところ,プラチナ電極ではなく,表面修飾した金電極でもっとも良い特性が得られた.この理由については現在検討中である.
結果として,表面修飾した金電極のCn-DNTTトランジスタで有機トランジスタとしては比較的小さい630 ohm cmのコンタクト抵抗が得られた.チャネル長 2 ミクロンまでのトランジスタを作製したところ,短チャネルのトランジスタではやや移動度が低下するものの,4 ミクロンのトランジスタで移動度 2.1 cm^2/Vs,2 ミクロンのトランジスタでは移動度 1.5 cm^2/Vsの値が得られた.この移動度は数ミクロンの有機トランジスタとしては非常に高い移動度であり,今後の展開により高速動作が期待できる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成24年度の開始当時,次のように計画した.高移動度材料として知られるCn-DNTTを中心に有機PMOSについて,低コンタクト抵抗を実現するための電極構造についての研究を進める.低コンタクト抵抗を実現するためには,①電極材料の選定,②電極のプロセス工程,③電極表面処理が重要であり,これらを平行して進める.
当初は電極材料として仕事関数の大きい白金電極を用いる予定であったが,研究実績の概要で述べたように結果として金電極を有するトランジスタの方が,特性が良いことが分かった.当初予定と電極材料が異なるものの,短チャネル,高移動度のトランジスタが実現できておりおおむね順調に進展していると判断した.

今後の研究の推進方策

平成25年度は,Cn-DNTTを中心に有機PMOSのさらなる短チャネル化と高移動度化を目指す.また,回路応用の際に重要となる閾値制御を試みる.短チャネル化についてはリソグラフィー技術を向上することにより2ミクロン未満のトランジスタの作製を試みる.高移動度化については,①絶縁膜表面もしくは絶縁膜材料の検討,②分子配向を制御するための製膜条件の最適化,③電極構造のさらなる改善により進める.閾値電圧制御については,①絶縁膜表面への分極をもつ分子のSAM膜,②絶縁膜へのプラズマ処理,③絶縁膜への分極分子のドーピング等により閾値電圧を制御することを試みる.また,実際に高速動作を実現するためのトランジスタを作製し高速動作を試みる.
平成26年度は,それぞれのプロセス技術を統合し,短チャネル・高移動度の有機NMOSと有機PMOSとを集積化しCMOS回路の高速動作に取り組む.有機PMOSにはCn-DNTT,有機NMOSにはC60を主に用いる.有機NMOSとPMOSを同一基板上に作製する場合,電極および絶縁膜に対する表面処理に用いる分子が異なるので,各領域で異なる表面処理を適応するプロセスが必要となる.一つの方法としてインクジェット装置を用い,パターニングされた表面処理を実現する.他の方法として,メタルマスクを使用した,UV/ozone処理による分子膜のパターニングも検討する.CMOS回路の動特性には,移動度だけでなく,閾値電圧にも大きく依存する.閾値電圧と動特性との関係を実測する.また,簡単なシミュレーションを行い,シミュレーション結果と実験結果との相違について評価する.さらにシミュレーション結果と実験結果との相違を考慮し,シミュレーションにより高速化のための閾値電圧の最適化を行う.

次年度の研究費の使用計画

平成25年度の予算は数10万円程度であり,実験を進めるために最低限必要となる消耗品(基板,材料)および研究発表のための旅費に充てる.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012

すべて 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] 酸素プラズマ処理による有機薄膜トランジスタの閾値電圧制御2013

    • 著者名/発表者名
      木村由斉,香月一真,田中翼,北村雅季,荒川泰彦
    • 学会等名
      第60応用物理学関係連合講演会
    • 発表場所
      神奈川
    • 年月日
      20130327-20130330
  • [学会発表] 酸化モリブデン/アルミ電極を有するアルキルDNTT薄膜トランジスタ2013

    • 著者名/発表者名
      香月一真,木村由斉,田中翼,北村雅季,荒川泰彦
    • 学会等名
      第60応用物理学関係連合講演会
    • 発表場所
      神奈川
    • 年月日
      20130327-20130330
  • [学会発表] Dinaphthothienothiophene Thin-Film Transistors with Aluminum/Molybdenum Oxide Electrodes2013

    • 著者名/発表者名
      Masatoshi Kitamura and Yasuhiko Arakawa
    • 学会等名
      7th Int. Conf. Molecular Electronics and Bioelectronics (M&BE7)
    • 発表場所
      Fukuoka
    • 年月日
      20130317-20130319
  • [学会発表] 高性能有機CMOS回路-高速動作はどこまで可能か-2012

    • 著者名/発表者名
      北村雅季,荒川泰彦
    • 学会等名
      薄膜材料デバイス研究会 第9回研究集会「薄膜デバイスの未来」
    • 発表場所
      奈良
    • 年月日
      20121102-20121103
    • 招待講演
  • [学会発表] Dinaphtho Thieno Thiophene Thin-Film Transistors with Modified Platinum Electrodes in Bottom-Contact Configuration2012

    • 著者名/発表者名
      Masatoshi Kitamura, Yoku Tanaka, Woogun Kang, Yasuhiko Arakawa
    • 学会等名
      International Conference on Solid State Devices and Materials (SSDM 2012)
    • 発表場所
      Kyoto
    • 年月日
      20120925-20120927
  • [学会発表] 高移動度ボトムコンタクト型アルキルDNTT薄膜トランジスタ2012

    • 著者名/発表者名
      北村雅季,田中 翼,康 宇建,荒川泰彦
    • 学会等名
      第73回応用物理学会学術講演会
    • 発表場所
      愛媛
    • 年月日
      20120911-20120914
  • [学会発表] ボトムコンタクト型DNTT薄膜トランジスタの大気安定性2012

    • 著者名/発表者名
      田中 翼,北村雅季,康 宇建,荒川泰彦
    • 学会等名
      第73回応用物理学会学術講演会
    • 発表場所
      愛媛
    • 年月日
      20120911-20120914

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi