研究概要 |
自己ドープ型のポリアニリンスルホン酸(PAS)と水酸化ナトリウムとの種々の仕込み比による酸ー塩基反応により、PASナトリウム塩を合成した。これらの反応により、ナトリウム塩化率の異なる5種類のPAS-Na(0.2), PAS-Na(0.4), PAS-Na(0.6), PAS-Na(0.8), PAS-Na(1.0) (括弧内の数値は、ナトリウムスルホン酸ユニット含有率を表す)を得た。PAS-Naの電気化学的酸化電位は、ナトリウム塩化率が高くなるにつれて、低電位に観測された。また、ナトリウム塩化率が高くなるにつれて、PAS-Naの電気伝導度が低下した。この結果は、PAS中のスルホン酸基がスルホン酸ナトリウム基に変換されたことにより、スルホ基によるPAS主鎖の自己ドーピングが阻害されることに由来する。一方、PAS-Naのゼーベック係数は、ナトリウム塩化率が高くなるにつれて向上した。この結果は、ナトリウム塩化率が高くなるにつれて自己ドーピングが阻害されることに基づく、PAS-Na内のキャリアー数の低下によるものと考えた。ここで、ゼーベック係数は、理論的にキャリアー数の2/3乗に反比例することが知られており、本結果とよく対応している。今回の研究により、自己ドープ型の導電性高分子のゼーベック係数制御に関する指針が得られたことになる。つまり、電気伝導度の低下があまり大きくならない程度にPASのスルホ基をナトリウム塩化して、キャリアー数を減少させればよいことになる。
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