研究課題/領域番号 |
24550213
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
松原 浩 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20239073)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 二次電池 / 正極活物質 / 含フッ素化合物 |
研究概要 |
本研究では、フルオラス化合物において未開発な性質であるペルフルオロアルキル基の強力な電子求引性を活用した高性能の酸化剤を合成し、さらに、この特長を活かした機能性電子材料、すなわちフッ素系二次電池正極材料を開発を目指している。平成24年度は、(1)ペルフルオロアルキルベンゾキノン系酸化剤の合成とその電気化学的性質の評価、および(2)フルオラスベンゾキノン類を用いた二次電池材料の開発を行った。それぞれについて概要を述べる。 (1)ペルフルオロアルキルベンゾキノン系酸化剤の開発:シアノ基を導入した2-シアノ-3-トリフルオロメチル-1,4-ベンゾキノンと2-シアノ-3-ペルフルオロブチル-1,4-ベンゾキノンの合成を試みた。その結果、前者では目的物が昇華性であることから最終段階の収量が激減し目的物の単離に至らなかったが、後者は物性を測定するに十分な量の合成に成功した。得られた化合物のフルオラス性を評価した後に、酸化剤としての性能を見るために酸化還元電位の測定を行った。その結果、従前に合成していたフルオラスベンゾキノン類を遙かに凌ぐ大きな酸化力を有していることが分かった。 (2)合成したベンゾキノン誘導体を用いて二次電池を作製した。今年度合成に成功したベンゾキノン誘導体および今までに合成できているフルオラスベンゾキノン類を正極活物質として用いで電極を作製した。電極の酸化還元特性などを調べた。さらにに得られた電極を用いて二次電池を作製し、容量密度やエネルギー密度、充放電特性、サイクル特性などを評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、フルオラス化合物において未開発な性質であるペルフルオロアルキル基の強力な電子求引性を活用した高性能の酸化剤を合成する。さらに、この特長を活かした機能性電子材料、すなわちフッ素系二次電池正極材料を開発することを目的としている。今年度は、以下3つの成果を挙げることができた。 (1)ペルフルオロアルキルベンゾキノン系酸化剤の合成に成功した。 (2)合成した酸化剤の電気化学的性質を評価しところ、従来の化合物を越える酸化力を有していることが判明し、高性能の酸化剤を開発することができた。 (3)得られた材料を正極活物質として用いる二次電池を作製することに成功した。得られた電池は、サイクル特性に改善すべき点はあるものの、大きな容量密度を有するなど二次電池として高い性能を示すことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
さらに高性能な正極活物質を開発する目的で、新たな骨格を持つフッ素系正極活物質の合成を開始する。現在までの研究によってフッ素系正極活物質は安定性や出力電圧より二次電池正極剤として適していると考えられる。 正極活物質として以下の条件を満たす化合物が必要である。①可逆な多電子レドックス反応を起こす有機物であること、②大きな容量密度を得るためにはできるだけ分子量が小さいこと、③合成や精製が簡単で電気的に安定であること、④電極から正極活物質のリーチングをさけるため有機溶媒への溶解度が小さいこと。とりわけサイクル特性を向上させるためには、溶解度の低い材料を開発する必要がある。 これらの条件を考慮してレドックス活性な有機物を精査すると、トリフルオロメチル基を有する多電子受容体とその多量体が有力な合成候補となる。この中で、平成25年度はトリフルオロメチルベンゾキノンの多量体の合成と正極活物質としての評価を行う。まずは、トリフルオロメチルベンゾキノンを直結した二量体やメチレン鎖やエチレン、アセチレンで架橋した二量体を合成し、得られた化合物を用いて電極を作製する。ついで製作した電極を用いて二次電池を作製し、その性能を評価する。二量体化によって溶解度が減少し、電極からの活物質のリーチングが抑制できると考えられる。二量体で良好な性能が得られれば、更に性能の向上を目指して三量体以上のオリゴマー合成へと研究を展開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は液体クロマトグラフなど比較的大型の物品を導入し、研究に着手した。試薬やガラス器具などは予備実験で使用した残りの物品を最大限活用することができたため、材料費を大幅に節約することになった。また、旅費の発生もなく、結果的に約80万円の未使用研究費が発生した。 次年度は新たな骨格の正極活物質を合成し、合成した正極活物質を用いて二次電池を試作後、その評価を行うことを予定している。そのため、薬品代を中心に以下の内容で研究費を使用する計画である。①トリフルオロベンゾキノン多量体の合成(薬品:60万円、合成実験用器具:40万円)②トリフルオロベンゾキノン多量体の評価(二次電池材料:30万円、測定セル:10万円)③旅費(学会発表:電池討論会、日本化学会、フルオラスシンポジウム):20万円、合計160万円。
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