研究課題/領域番号 |
24550215
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 湘南工科大学 |
研究代表者 |
木枝 暢夫 湘南工科大学, 工学部, 教授 (80169812)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 鉛蓄電池 / サルフェーション / 高分子添加剤 / 硫酸鉛被膜の形状 / 充放電挙動 |
研究概要 |
H24年度の研究計画に沿って下記の研究をおこなった. 1.試験用セルの作成:充放電試験用の大容量モデルセルの作成を,購入した資材を用いて作成することを試みたが,十分な成果が得られなかった. 2.放電による酸化鉛被膜の生成:1.の結果から,とりあえずの予備実験として,鉛板を電極とする簡易型のセルを用いて,電解液に各種高分子添加物を加えて充放電をおこなった際に電極表面に形成される酸化鉛被膜の生成挙動を調べた.その結果,高分子添加の有無だけでなく,高分子の種類によっても,形成される酸化鉛被膜の形状に大きな違いが見られることがわかった.これまでの研究で有効性が大きいと認められた添加物では,酸化鉛粒子のサイズが小さく形もはっきりしなくなるという傾向が認められており,これがサルフェーションによる充電阻害を低減させる効果と関係があるものと考えられた. 3.生成した硫酸鉛被膜及び電解液の評価:上記の電子顕微鏡観察による評価以外に,薄膜X線回折,蛍光X線分光分析,ラマン分光分析による生成物の評価を試みた.薄膜X線回折の結果から生成物は硫酸鉛であり,蛍光X線分析の結果もこれと対応するものであった.しかしながら,高分子添加剤の有無による違いは明瞭では無く,またラマン分光による分析でも膜中の高分子の存在を示す結果は得られなかった. 4.充放電試験:購入した3ch充放電装置を用い,市販のバイク用小型セルの電極をモデルセルに用いた充放電試験をおこなった.セル特性に合った充放電試験条件を見いだすことに時間を要しており,現在の所,高分子添加剤が充放電挙動に及ぼす影響は確認できていない.実際の違いが明瞭になるにはかなりの回数の充放電か,過充電・過放電のような高負荷の試験が必要となる可能性が認識されたため,これに対する試験条件の設定を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでの遅れの主な理由は試験量の不足であり,当初計画に何らかの問題があったわけでは無い.試験量不足の理由は以下の通りである:1.充放電装置の納期遅れ;2.研究代表者の学内での職務増加;3.重要な評価装置のトラブル. これらの中で,1.と3.はすでに解消している.一方2.についてはH25年度から代表者が学内の重職に就くことになり,本研究のためのエフォートを減じざるを得ない状況となった.この問題を改善するため,研究室および学科レベルでの研究実施体制の見直しをおこない,まず十分な試験量を確保できるように努力している.
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今後の研究の推進方策 |
現時点では,研究計画に大幅な変更は必要ないと考えている.しかしながら,初年度にある程度の目処をつける予定であった実験方法と評価方法の確立が遅れており,これらをまず達成することが急務である. また,今後は放電後の長期保存によるサルフェーションの変化など,時間を要する試験もいくつか実施する必要があり,これらについてはサンプル数を増やして効率の向上を図りたい.併せて,充放電試験の試験回数を増やすため,装置の増設を検討する.さらに,試験の条件設定や全体のスケジュールを見直し,一定の期間ごとに確実な結果を積み上げてゆけるようにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度に購入した3ch充放電装置は,制御ソフトとして8chまで対応している.そこで,本年度の予算で1chを増設し,充放電試験の回数を増やすことを検討している.これに要する費用は,当初予定していた国際会議への参加が職務上難しくなったため,このために計上してあった予算を振り替えるとともに,H24年度の未使用分を充当することで捻出できると考えている.
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