研究課題/領域番号 |
24550216
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
山田 直臣 中部大学, 工学部, 准教授 (50398575)
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キーワード | ナノロッド / 二酸化チタン / アナターゼ型 / 色素増感型太陽電池 |
研究概要 |
本研究の目的は,NbドープTiO2透明電極上へ,TiO2ナノロッド群を成長させて,色素増感太陽電池(DSSC)用の全酸化チタン光電極を実現することである。昨年度までに,a軸配向したルチル型TiO2ナノロッド群(r-TiO2-NRs)を成長させる方法を確立した。 今年度の前半は,このr-TiO2-NRsを用いて,DSSCを作製することに取組んだ。各種条件でr-TiO2-NRsを成長させ,これをDSSC化した。作製したDSSCは太陽電池として動作したが,変換効率は最大でも0.53%(短絡電流密度(Jsc):1.78 mA cm-2,開放電圧(Voc):0.65 V,曲線因子(FF):0.46)と低い値しか得られなかった。この原因は,TiO2がルチル型であるためと推測される。アナターゼ型TiO2の方が電子の移動度が高いので,より高い変換効率が得られると考えた。 そこで,今年度の後半にはアナターゼ型のTiO2ナノロッド群(a-TiO2-NRs)を成長させる方法を確立し,DSSC化することに取組んだ。a-TiO2-NRsを成長させるには,r-TiO2-NRsの成長とは異なる方法が必要であった。具体的には,(1)塩化チタン蒸気を透明電極上に凝集させて,(2)大気中の水分により加水分解(50~100℃の範囲)し,(3)大気焼成(450℃)により結晶化させた。これにより,a-TiO2-NRsを成長させることができた。加水分解温度50℃で作製したa-TiO2-NRsをDSSC化すると,変換効率1.18%(Jsc:3.19 mA cm-2,Voc:0.75 V,FF:0.49)が得られた。すなわち,r-TiO2-NRsをa-TiO2-NRsに変えることで,Jscが約2倍に増大し,効率が2倍になった。TiO2ナノロッドを用いたDSSCで報告されている変換効率の最高値(~2%)に迫る値が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アナターゼ型のTiO2ナノロッド群を作製するプロセスを確立できた。また,これを用いて色素増感型太陽電池を作製できた。加えて,ナノロッド群を用いた色素増感太陽電池としては非常に大きい変換効率1.18%が得られた。ここまでは,当初の予定通りかそれ以上である。しかし,ナノロッド/透明電極界面の電子物性と配向性制御については,評価方法と成長方法の検討に時間を要しており,進展がやや遅れていると言わざるを得ない。 以上から,達成度の区分を「(2)おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に,ルチル型/アナターゼ型TiO2ナノロッドの作り分けの方法を確立できた。また,これらを用いて色素増感型太陽電池を作製するプロセスも確立できた。 今後は、現在遅れているナノロッド/透明電極界面の電子物性の解明を行い,より高い変換効率を得るための知見を得る。界面電子物性の解明には,インピーダンス測定を用いる予定である。また,アナターゼ型TiO2ナノロッドのナノレベルでの構造は明らかにできていないので,透過型電子顕微鏡等を用いて調査を行い,配向成長のための基礎的な知見を得ることも行う。この調査に基づいて,配向成長させる方法をリファインしていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2014年1月後半に,太陽電池特性評価用のソーラーシミュレータが故障し,修理をする必要が生じた。修理費が確定するのは修理後のため,約20万円を準備していた。2014年3月に修理費用が18万9千円と確定したため,20万円との差額約11000円が次年度使用額として生じた。 次年度使用額は,ソーラーシミュレータ修理のために購入を控えた試薬(塩化チタン等)を購入するために用いる。
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