研究課題/領域番号 |
24550217
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
堤 治 立命館大学, 生命科学部, 准教授 (00313370)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 発光 / 液晶 / 錯体 / 親金相互作用 |
研究概要 |
金錯体は分子が凝集することで,強い発光を示す。従って,その発光挙動(発光強度,色など)は錯体の凝集構造に強く依存する。つまり,金錯体を発光材料として利用するためには,発光に適した凝集構想をとらせる必要がある。われわれは,凝集構造を適切に制御する方法の一つとして金錯体に液晶性を付与することを着想し,いくつかの液晶性金錯体の開発を行ってきた。本研究では,このような液晶性金錯体を発光デバイス用の材料として応用するための基礎研究を行う。特に,今年度は,実用的な発光材料を目指して,室温を含む広い温度範囲で液晶性を示す金錯体を設計・合成し,発光に適した凝集構造をとらせることで高い発光効率を示す材料を開発することを目的とした。 室温に近い温度で液晶性を発現するために,棒状の分子形状をもつ液晶性金錯体分子の対称性を崩して融点を低下させることを検討した。まず,配位子の構造を分子長軸方向に伸長した錯体を合成した。また,分子末端に導入する柔軟鎖に側鎖を導入することでも分子構造の対称性を崩すことを試みた。これらの分子設計の結果,錯体の融点が40 °C以上も低下し,50 °C程度の温度で液晶相を発現した。また,剛直部位のアスペクト比が大きくなったことに起因して液晶温度範囲も広がった。合成した錯体の結晶構造解析より,結晶相で金原子間に相互作用(親金相互作用)を示すことが分かった。発光挙動を観察した結果,結晶相や液晶相のような凝集相で,親金相互作用に基づく強い発光を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,室温を含む広い温度範囲で液晶相を発現する材料の開発を目標とした。上述のように,棒状液晶性錯体の剛直部位の構造(アスペクト比)と末端柔軟鎖に側鎖を導入することで融点の大幅な低下と液晶温度範囲の拡大を達成できた。目標とした室温液晶の開発にはいたらなかったが,液晶発現温度の低下と液晶温度範囲を拡大させるための分子設計指針を得た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,さらなる液晶発現温度の低下と液晶温度範囲を拡大するための分子設計・合成を行い,室温液晶性金錯体を開発する。また,合成した錯体については,発光挙動を詳細に検討する。特に,配向に基づいて,液晶性発光材料は直線あるいは円偏光発光を示すことが期待できるため偏光特性についての観察を行う。さらに,液晶は流動性も併せもつので,外場(電場,磁場,光など)で凝集構造を制御でき,凝集構造を変えることで偏光発光特性も外場制御できる可能があるのであわせて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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