研究課題/領域番号 |
24550217
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
堤 治 立命館大学, 生命科学部, 准教授 (00313370)
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キーワード | 発光 / 錯体 / 液晶 / サーモクロミズム |
研究概要 |
種々の液晶性金(I) 錯体の合成と機能の評価を行った。特に,今年度は棒状の分子形状をもつ液晶分子の開発を行い,液晶性と分子構造および発光特性と分子構造・分子凝集構造について検討した。その結果,棒状メソゲンのコア部位の長軸方向の長さおよびアスペクト比が液晶挙動に大きな影響を与えることを見いだした。例えば,コア部位にフェニル基を導入した化合物は数度程度の温度範囲でのみしか液晶性を示さないのに対して,分子長軸がより長いビフェニル骨格を導入することで数10度という温度範囲で液晶相が発現した。しかしながら,ビフェニル骨格のようなアスペクト比が大きなコアは融点も高くなり,液晶材料としては活用しにくいことも分かった。そこで,ナフタレン骨格のような適度な分子長とアスペクト比をもつコアを有する金錯体を合成したところ,室温付近から数10度という広い温度範囲で液晶相(ネマチック相)を発現する金錯体の開発に成功した。 合成した液晶性金錯体の発光挙動を観察した結果,全ての錯体が結晶のような凝集相においても強い発光を示すことが分かった(量子収率 > ~10%)。また,相転移により分子の凝集構造変化を誘起することで,発光挙動も変化することを見いだした。特に,金(I)の対イオンとして塩化物イオンを有する錯体では,結晶-液晶相転移により,発光色が変化する発光サーモクロミズム現象を示すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のようにこれまでに当研究では30種類以上の新規液晶性金錯体の合成を行い,液晶性と分子構造および発光特性と分子・分子凝集構造に関して系統的な調査を行い,構造-機能相関を明らかにしてきた。また,当初の目標である「チューナブル発光材料」の開発にも成功しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発してきた新規液晶性金錯体を高分子に導入した「高分子液晶」を開発していく。高分子は成膜性,加工性などに優れていることから材料として利用しやすい。また,高分子液晶とすることで,一般に,液晶温度範囲が飛躍的に向上することが知られているので,より有用な液晶性金錯体を開発できると考えてている。また,これらを用いた発光デバイスも試作し,実用材料としての評価も行っていく予定である。
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