本研究課題では、含フッ素オリゴマー/シリカナノコンポジットコア内へカプセル化させた低分子芳香族化合物の不燃化に成功し、さらにペルフルオロ-1,3-プロパンジスルホン酸(PFPS)/シリカナノコンポジットコア内へカプセル化させた熱分解しやすいNafionの不燃化にもそれぞれ成功した。そこで、本年度における研究では有機物への不燃性付与剤であるPFPS/シリカナノコンポジットに注目し、PFPS/シリカナノコンポジットによるセルロース沪紙膜の表面改質への応用について検討を行った。その結果、改質されたセルロース膜は不燃性を示すことが確認された。このように、本研究課題を遂行させることにより新しいタイプのフッ素系ナノコンポジット類の開発を成功させ、さらに種々の有機物への不燃性付与剤としてヘキサフルオロシリケートアニオンさらにはフッ化カルシウムが重要な無機成分であることを明確にさせた。これらの結果は、ヘキサフルオロシリケートアニオンさらにはフッ化カルシウムの生成が有機物への不燃化に重要であるばかりではなく、フッ素化合物中のフッ素源が焼成プロセスによりフッ化水素として系外に排出することなく、フッ化金属物として回収できることを強く示唆している。実際、本研究課題ではシリカナノコンポジットコアにおいて不燃性ではなく可燃性を示すフルオロアルキル基含有オリゴマー類とカルシウムシリサイド微粒子とのナノコンポジット化について検討を行った。その結果、得られたナノコンポジットは800℃焼成後において、含フッ素オリゴマーに起因したフッ素源をフッ化カルシウムとして定量的に回収できることを見いだした。このように、本研究課題では有機物へ不燃性を発現させる因子を解明させることに成功するとともに、フッ素の新しいタイプの環境循環型リサイクルシステムへの展開を可能とさせうる知見をも見いだした点は高く評価できる。
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