研究課題/領域番号 |
24550221
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山野井 慶徳 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20342636)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オリゴシラン / 分子内電子移動 / カップリング / パラジウム / ドナー性置換基 / アクセプター性置換基 |
研究概要 |
ケイ素―ケイ素結合およびケイ素―アリール結合をもつ化合物は、ケイ素のσ軌道とアリール基のπ軌道の超共役により、強い蛍光特性が発現することが報告されている。我々は、パラジウム触媒を用いたヨウ化アリールとヒドロシラン間のカップリング反応を見い出しており、本研究では、ドナー性アリール基とアクセプター性アリール基をケイ素―ケイ素結合で架橋した化合物群の合成および光学特性の調査を行った。 パラジウム触媒と塩基の存在下、ドナー部位が結合したヒドロジシラン化合物にアクセプター性置換基を有するヨウ化アリールをカップリングさせ、目的の非対称ジアリールジシラン類を収率40%程度で合成した。用いたドナーは4-メトキシフェニル基、4-ジメチルアミノフェニル基、2-チエニルの3種類であり、用いたアクセプターはそれぞれオルト、メタ、パラ位のニトロ基、ニトリル基、トリフルオロメチル基の計9種類である。このうち、オルト位置換のヨウ化アリールについては、立体反発のために化合物の収率が低下することがわかった。 続いてこの化合物群の光学特性を調べた。アクセプターがニトリル基、およびトリフルオロメチル基の場合、蛍光を示した。吸収は230 nmから280 nmの紫外領域で、蛍光は300 nmから600 nmの領域で確認された。蛍光は芳香環部分で吸光-蛍光を完結する過程と、分子内電荷移動(ICT)による過程の二種類の発光過程を持つことを確認した。続いて溶媒の種類、置換位置による蛍光特性の変化を調査したところ次に示す結果になった。分子内電荷移動による蛍光は溶媒の極性が上がるごとに波長が長波長シフトし、その度合いはメタ位よりもオルト位、パラ位の方が大きくなった。また、固体状態の蛍光波長は概ね芳香環部分で吸光-蛍光を完結する過程と一致することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように目的とする化合物群の合成はほぼ終了し、紫外・可視吸光スペクトル、蛍光スペクトルなど物性測定の一部も完了していることから、研究はおおむね順調に進行している。平成25年度はこれらの蛍光寿命や非線形光学定数の測定を中心に研究を展開する予定である。当初の研究計画のように非対称テトラアリールペンタシランの合成にも着手する。
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今後の研究の推進方策 |
目的とする化合物の合成に成功し、紫外可視吸収スペクトル、蛍光スペクトルの測定も行った。今後は、酸化還元電位を電気化学測定装置にて、2次及び3次の非線形光学定数(d定数)を非線形光学材料測定装置にて測定する。非線形光学特性を調査する際に結晶のパッキング状態を調べる必要もあり、単結晶作成とX線構造解析を並行して行う。得られた結果をタイムリーにJournalや国際学会で発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は非対称ジアリールジシランの物性測定を中心に研究を展開するので、酸化還元電位測定、非線形光学測定に必要な試薬類や消耗品を購入する。また研究費の一部はテトラアリールペンタシランの合成用の試薬・ガラス器具の購入にも使用する。研究費の一部は平成25年11月の錯体化学討論会(沖縄)で成果発表をする予定なので、その出張旅費として、また論文投稿に係る英文添削代、論文別刷り代をその他の経費として使用する。
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