研究課題/領域番号 |
24550225
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大山 陽介 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60403581)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 蛍光性色素 / 光電変換 / 色素増感太陽電池 / 光増感 / 酸化チタン |
研究概要 |
本年度は、色素から酸化チタン(TiO2)電極の伝導帯(CB)にダイレクトな電子注入が可能な「新型D-π-A蛍光性色素」として、ピリジル基を2つ有するD-π-A蛍光性色素YNI-1とYNI-2を分子設計・合成した。両色素を用いた色素増感太陽電池(DSSCs)を作製し、光電変換特性を評価した。 TiO2に吸着したYNI-1とYNI-2の光吸収極大波長は、溶液中と比べて25nmほど長波長シフトした。色素の吸着状態を調べるために、TiO2上に吸着させた色素のFTIRスペクトル測定を行った。YNI-1は色素のピリジル基の窒素(N)とTiO2のブレンスレッド酸サイト(OH)間で水素結合を形成して吸着しているが、YNI-2は色素のピリジル基の窒素 (N)とTiO2のルイス酸サイト(Ti)間で配位結合を形成して吸着していることがわかった。色素YNI-1とYNI-2を用いたDSSCsを作製し、電流-電圧測定およびIPCEスペクトル測定から光電変換特性の評価を行った。YNI-1と比べて、チオフェン環を導入したYNI-2の短絡光電流、開放光起電圧および光電変換効率は高い値を示した。さらに、YNI-2の最大IPCE値は、YNI-1よりも高い値を示した。すなわち、YNI-1の水素結合に比べて、YNI-2の配位結合は、色素からTiO2電極への電子注入効率を高める効果があることが明らかとなった。本年度の研究成果から、色素のピリジル基がTiO2のルイス酸サイトに配位結合を形成できる分子構造の構築が、高効率なピリジン系新型D-π-A光増感色素の分子設計において重要であることを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、色素からTiO2電極の伝導帯(CB)にダイレクトな電子注入が可能な「新型D-π-A蛍光性色素」の分子設計指針を確立し、広範囲の太陽光を利用することができる高効率なTypeII型色素増感太陽電池(DSSC)の開発を目的としている。本目的を達成するために申請用で提案した色素は、ピリジン系色素、カテコール色素、ボロン酸系色素の三つである。本年度は、その一つのピリジン系色素の分子設計指針を提案することができたので、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ピリジン系色素、カテコール色素、ボロン酸系色素の合成および色素増感太陽電池特性評価に加えて、X線光電子分光分析(ESCA)、過渡吸収、過渡光起電圧測定を駆使してTypeII型の光特性の解明、さらに、これらの色素に適う酸化チタン電極の作製・改質を行い、高効率なTypeII型色素増感太陽電池(DSSC)の開発を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では、色素増感太陽電池(DSSC)用の「新型D-π-A蛍光性色素」として、カテコール色素の合成およびDSSC特性評価を行う。カテコール色素の合成における試薬や溶媒およびDSSC作製におけるTiO2電極や電解液などの消耗品費として700000円程度を計上している。また、簡易真空ポンプなどの設備費として200000円を計上している。研究成果発表旅費として100000円を計上している。よって、本年度の研究費の総額は1000000円である。
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