研究課題/領域番号 |
24550225
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大山 陽介 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60403581)
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キーワード | 蛍光性色素 / 光電変換 / 色素増感太陽電池 / 光増感 / 酸化チタン光電極 |
研究概要 |
本年度は、色素のHOMOからTiO2電極のCBへのダイレクトな電子注入(DTCT)が可能な色素増感太陽電池(DSSC)用新型色素として、カテコール(Cat)基を有するD-π-Cat蛍光性色素YM-1、YM-2およびYM-3を分子設計・合成した。これらの色素を用いたDSSCを作製し、光電変換特性の評価を行った。YM-1、YM-2およびYM-3を吸着させたTiO2薄膜の光吸収スペクトル測定を行った。THF溶液中で見られた分子内電荷移動(ICT)吸収帯に加えて、TiO2薄膜に吸着したYM-1、YM-2およびYM-3の光吸収スペクトルは、450-800 nmにDTCTに由来するブロードな吸収帯が新たに出現した。この結果から、D-π-Cat蛍光性色素は、色素のHOMOからTiO2電極のCBへのダイレクトな電子注入が可能であることがわかった。色素YM-1、YM-2およびYM-3を用いたDSSCを作製し、I-V測定およびIPCEスペクトル測定から光電変換特性の評価を行った。YM-1とYM-2を用いたDSSCのIPCEスペクトルは、TiO2薄膜に吸着したYM-1とYM-2の光吸収スペクトルと良い一致を示したことから、色素のHOMOからTiO2電極のCBへのダイレクトな電子注入により光電流が発生していることがわかった。一方、チオフェン環を導入したYM-3を用いたDSSCのIPCEスペクトルは、THF溶液中の光吸収スペクトルに似ていることから、色素のHOMOからLUMOを経由してTiO2電極のCBへの段階的な電子注入(ICT)により光電流が発生していることがわかった。本年度の研究成果から、D-π-Cat蛍光性色素のπ共役系の拡張は、色素のHOMOからTiO2電極のCBへのダイレクトな電子注入特性を減少させ、LUMOを経由したICTによる電子注入特性を増大させることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、色素からTiO2電極の伝導帯(CB)にダイレクトな電子注入が可能な「新型D-π-A蛍光性色素」の分子設計指針を確立し、広範囲の太陽光を利用することができる高効率なTypeII型色素増感太陽電池(DSSC)の開発を目的としている。本目的を達成するために申請用で提案した色素は、ピリジン系色素、カテコール系色素、ボロン酸系色素の三つである。昨年度は、ピリジン系色素の開発を達成し、本年度は、カテコール系色素の開発に成功し、D-π-Cat蛍光性色素の分子設計指針を提案することができたので、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、新型D-π-A蛍光性色素の分子設計・合成および色素増感太陽電池特性評価を行うのと同時に、インピーダンス測定、過渡吸収、過渡光起電圧測定を駆使してTypeII型DSSCの光電変換特性を深く追求したい。さらに、新型D-π-A蛍光性色素に適した酸化チタン電極を作成し、TypeII型DSSCの光電変換特性の改善を達成したい。
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