本年度は、電子求引性・吸着基としてピラジン環およびトリアジン環を有するピラジン系色素OUK-1およびトリアジン系色素OUJ-1を分子設計・合成した。これらの色素を用いた色素増感太陽電池(DSSC)を作製し、光電変換特性の評価を行った。TiO2薄膜上に吸着させた色素のFT-IRスペクトル測定から、OUK-1およびOUJ-1は、色素のピラジン環およびトリアジン環の窒素原子(N)とTiO2のブレンステッド酸サイト(Ti-OH)間で水素結合あるいはアジニウムイオン(OUK-1ではピラジニウムイオン、OUJ-1ではトリアジニウムイオン)を形成して吸着していることがわかった。一方で、電子求引性・吸着基としてピリジン環を有するピリジン系色素NI-6は、色素のピリジン環の窒素(N)とTiO2電極のルイス酸サイト(Tin+)間で配位結合(N-Tin+)を形成して吸着する。TiO2電極への色素吸着量を算出した結果、OUK-1とOUJ-1の色素吸着量は、NI-6の吸着量の半分程度であることがわかった。これらの色素を用いてDSSCを作製し、I-V測定とIPCE測定から光電変換特性の評価を行った。TiO2電極への色素吸着量が同程度の場合、ピラジン系色素OUK-1およびトリアジン系色素OUJ-1は、ピリジン系色素NI-6に匹敵する短絡光電流および光電変換効率を示すことが明らかとなった。本研究から、ピリジン-TiO2間の配位結合と同様に、色素がTiO2電極に水素結合やピラジニウムイオンを形成し吸着することでも効率良く色素からTiO2電極へ電子注入されることがわかった。
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