研究課題/領域番号 |
24550226
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
小木曽 真樹 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノチューブ応用研究センター, 主任研究員 (10356975)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 自己組織化 / ナノ材料 / 有機ナノチューブ / グリシルグリシン / ペプチド脂質 |
研究概要 |
本研究は、グリシルグリシンを結合したペプチド脂質が形成する多様な自己組織化体の中でも特に有機ナノチューブに注目し、形成機構の解明や基礎物性の評価などの”基礎研究”と、高機能化や複合材料化などの”応用研究”を同時に推進する相乗効果により、「自己組織化ナノ材料の学術領域の発展」と、「有機ナノチューブの高機能化による世界で初めての実用化」の両面で高い成果を得ることを目的とするものである。 平成24年度は、”基礎研究”の項目としては、精密な分光分析手法を組み合わせて、有機ナノチューブだけでなく板状構造、シート状構造、ファイバー構造など、ペプチド脂質が形成する様々な自己組織化ナノ材料の精密な構造解析を行うことで、分子構造や形成機構の解明を行った。また、これら自己組織化ナノ材料の表面粘性を初めて明らかにし、水素結合や金属配位結合のナノ材料中での寄与を定量化することに成功した。これらの研究成果を学会発表すると共に、現在複数の論文の投稿準備中である。 ”応用研究”としては、金属錯体を表面にもつ有機ナノチューブの酸化反応用触媒への応用や、ドキソルビシンなどの抗がん剤を吸着させたドラッグデリバリーシステムのナノキャリアとしての有効性を明らかとした。その際に、溶媒への分散性やナノチューブ構造の形態変化に関する上記の基礎研究より得られた知見が、これらの応用化の上で役立った。研究成果を学会発表すると共に、国際誌に1報、国内誌に2報発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は、本研究の採択が決定する直前の3月に産業技術総合研究所内部の総務本部への併任が決まったため、達成度は予定よりもやや遅れた。自分で手を動かす時間が限られていたため、研究遂行は他の研究予算で雇用したポスドクと共に行った。ただし、共同研究を行っている大学等に要望に添ったナノチューブサンプルを作成して提供し、研究結果の解析や解釈等に協力することで、当初の計画に記載した内容以上の部分では大きく進展した。 これにより当初の目的である「基礎研究」としては分子構造や形成機構などを詳細な分光分析により明らかとし、また「応用研究」としては各種有機化合物の酸化反応用触媒やドラッグデリバリーシステム用のナノキャリアとしての有効性を示すことが出来た。 平成25年度は併任も終了したため、あと2年間で当初の予定通り目的を達成することは全く問題がないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は採択決定直前に決まった総務本部への併任業務により、当初予定していた計画部分ではやや遅れているが、主に大学等との共同研究により記載した以上の部分では大きく進展している。今後は計画部分の研究を予定通り進めるために、本研究費による外部委託を増やすことで研究を加速していく。また、共同研究も今年度に続いて積極的に行い、本研究の目的を達成するために総合的に研究を推進する。 平成25年度は、今年度に得られた分子構造などの基礎研究で得られた知見を元にして、今年度計画がやや遅れた応用研究項目として、有機ナノチューブの高分子化や複合材料化を進めると共に、25年度に予定していた耐熱性・導電性・磁性・光学特性・内外異表面をもつ高機能化ナノチューブの大量合成化を行い、当初の計画通り進展させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
採択直前に決まった併任業務により自ら手を動かして研究を進める機会が減ったため、当初の計画より研究費を使用することがなく、次年度に向けて当初研究費の半分弱程度を残した。次年度は、当初の予定通り研究の目的を達成するため、論文の校正作業や分析などの外部委託に研究費を積極的に使用し、研究を加速する予定である。
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