研究実績の概要 |
平成26年度は、平成24,25年度に挙げた成果を中心に、基礎研究の深化と応用研究の発展を目指して研究を進めた。 基礎研究面では、前年度までに合成した脂質に加えて数種類の新規有機ナノチューブを開発することに成功し、特許出願を行った。また、ナノチューブ構造以外の自己組織化体として、球状ベシクルを初めて合成することに成功し、論文投稿の準備中である。研究期間全体としては主に下記3点の成果を得た。①精密な分光分析手法を組み合わせることにより、様々な自己組織化ナノ材料の精密な構造解析を行った。②自己組織化ナノ材料の表面粘性を初めて明らかにし、水素結合や金属配位結合のナノ材料中での寄与を定量化した。③ピリジン、アニリン系官能基を表面にもつ計6種類の新規有機ナノチューブを合成した。 応用研究面では、前年に開発したニッケルメッキ技術の大容量化に成功し、10gの技術紹介用サンプルを作成した。マグネタイトナノ粒子と容易に複合化する技術を新たに開発し、特許出願を行った。また、有機ナノチューブが重金属や有機化合物を吸着する効果を確認することで、随伴水処理技術として実用化を目指す他の外部研究資金を獲得するに至った。成果をまとめて解説記事を投稿した。研究期間全体としては主に下記4点の成果を得た。①金属錯体を表面にもつ有機ナノチューブを酸化反応用触媒へ応用した。②抗がん剤を吸着させることにより、DDSのナノキャリアとして応用した。③ニッケルメッキおよび磁性ナノ粒子複合化により強磁性ナノチューブを得ることに成功し、更に大量製造法を開発した。④吸着剤としての性能を示し、随伴水処理技術として実用化を目指すに至った。 以上の3年間にわたる研究開発により、計画当初に最終目的として掲げた「自己組織化ナノ材料の学術領域の発展」と「有機ナノチューブの高機能化による世界で初めての実用化」の両面で高い成果を得ることができた。
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