本研究課題では、シロキサン系ナノ構造単位を用いたボトムアッププロセスによる機能性シリカ系ナノ多孔体の合成を目的としている。H26年度は以下の二つの検討を行った。 1) かご型シロキサンはシリカ系多孔体のビルディングブロックとして有用であるが、頂点を適切に修飾し、分子間の連結を制御することが、機能性ナノ空間の創出という観点で重要である。そこで、昨年度報告したSi-H基とSi-OR基の二種類の官能基を有するかご型シロキサン(tBuO)7(H)Si8O12を用い、各官能基を段階的に反応させることによるシロキサン結合形成について検討した。まず、Et2NOH触媒存在下でH2Oと反応させることで、Si-H基をSi-OH基に変換し、次にトルエン溶媒中で加熱することで、Si-O-Si結合で連結されたかご型シロキサン2量体の合成に成功した。一方、BiCl3存在下で(tBuO)7(H)Si8O12とオルガノクロロシランを反応させることで、7つのtBuO基をシリル化することに成功した。 2) 触媒活性点となるヘテロ元素が組み込まれた新しい構造単位として、Si-O-Ti結合を有するSi-Ti複合アルコキシド((tBuO)3Si-O-Ti(OtBu)3)の合成について検討した。合成は、Ti-Cl基とSi-OH基の脱HCl反応により行った。不活性雰囲気下においてTi(OtBu)4とSiCl4を混合することにより官能基交換反応が進行し、Cl3SiOtBuとClTi(OtBu)3が高い選択性で得られることを見いだした。得られたClTi(OtBu)3をトルエン中でHOSi(OtBu)3と混合することによって脱HCl反応が進行し、(tBuO)3Si-O-Ti(OtBu)3が生成することがNMRにより示唆された。この分子は骨格中に分子レベルでTiが導入されたシリカ多孔体合成のビルディングブロックとして有用であると期待される。
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