• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

高圧反応による共有結合性金属化合物群の創製と新規超伝導体の探索

研究課題

研究課題/領域番号 24550233
研究種目

基盤研究(C)

研究機関広島大学

研究代表者

福岡 宏  広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00284175)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード高圧 / 超伝導 / 金属間化合物 / Zintl相 / 高圧合成
研究概要

1. 共有結合性金属化合物の電子状態の解明
我々が発見した超伝導体であるLaGe5, LaGe3 のX線吸収分光分析測定(SPring8 BL14B1で測定)から、これら化合物中のLaが、通常見られる3価の状態よりも若干低価数の状態をとっていることが明らかになった。これは、ゲストイオンであるLaとホストのGeの間に、共有結合的な直接の相互作用が存在することを示唆する重要な証拠の一つと考えられる。一方ホスト側のGeについては、これが負の価数を持つことを初めて明らかにした。これらの結果は共有結合性金属化合物では、骨格への電子ドープがその金属的性質に重要な役割を果たしていることを強く示唆しており、この系の化合物の電子構造を理解するうえでとても重要な結果である。
2. アルカリ金属を含む新規共有結合性金属化合物の合成
Na-Geの系において、あらたにNaGe2という新化合物の高圧合成に成功し、その構造を決定した。本化合物は、構造中に2種類のトンネルをもつカラム状化合物であり、そのトンネルにはそれぞれ2列、あるいは3列のナトリウムイオンが包含されている。また既知の共有結合性金属化合物は、そのほとんどが電子過剰型の金属化合物であったのに対し、本化合物は電子軌道計算の結果、珍しい電子不足型の化合物であることがわかり、今後その詳細な物性の解明に興味が持たれる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

交付申請書では平成24年度の研究実施計画として、1.共有結合性金属化合物の電子状態の解明と、2.アルカリ土類金属を含む共有結合性金属化合物の合成と超伝導体の探索の2点をあげた。このうち、2のテーマについては、平成25年度に研究実施予定として記載したアルカリ金属を含む共有性金属化合物の合成を前倒しして行ったところ興味深い化合物が得られたため、計画を変更しこの研究を先行して行った。その結果、研究実績の概要に示した通り、1については、期待どおり、ホストのゲルマニウムに電子がドープされていること、ゲストとホストの間に共有結合的な直接の相互作用があること、を示す解析結果を得ることができた。また、アルカリ金属ジャーマナイドの研究では、新しくNaGe2という金属化合物の合成に成功し、その結晶構造解析も行うことができた。興味深いことに、この化合物は電子軌道計算から珍しい電子不足型の金属化合物であることが強く示唆された。以上のことから、現在までのところ、研究目的の達成に向けておおむね順調に研究が進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

共有結合性金属化合物の電子状態を解明するという、本研究における大きな目標については、先に書いたようにこれまでの研究によって、ホスト-ゲスト間での電子のやり取りや、ホストにおける伝導電子の状態について、実験と理論計算の両面において重要な進展がみられた。今後は、更に多くの共有結合性金属化合物について同様の手段による研究を行い、これらの化合物群における電子構造の解明を進める予定である。また、Na-Ge系化合物の研究から、共有金属性化合物において珍しい電子不足型の金属を確認することができた。この系には他にも新化合物と思われる化合物が確認されており、今後これらの化合物の構造解析を進めるとともに、電子過剰型の化合物と不足型の化合物における電子構造の違いについて、更に研究を行っていく予定である。また、平成25年度からは、当初の研究計画どおり、簡易高圧合成装置の開発も進める予定である。更に、我々が研究対象としている希土類元素を含む共有結合性金属化合物の中には、CeGe3のように、強相関系・重い電子系化合物として有名なCeSn3と同形構造をもつ化合物がある。こうした金属化合物について、比熱・熱伝導率の測定を行うことによって、f電子と伝導電子の相関のあり方について詳しい研究を行う予定である。

次年度の研究費の使用計画

次年度(平成25年度)からは、簡易高圧合成装置の開発を進める予定である。このため、ハンドプレスや加熱用電源などのほかに、圧媒体、アンビルといった消耗品の購入を計画している。また、これまで通り、新化合物探索に必要な試薬や、電気物性・磁気物性の測定に必要な各種パーツの購入も行う予定である。更に、電子不足型金属化合物の研究を進めるために、電子軌道計算を行うための新たなソフトや計算機の導入も検討している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Structural and thermoelectric properties of Cu6Fe4Sn12Se32 single crystal2013

    • 著者名/発表者名
      K. Suekuni, K Tsuruta, H. Fukuoka, M. Koyano
    • 雑誌名

      Journal of Alloys and Compounds

      巻: in press ページ: in press

    • DOI

      10.1016/j.jallcom.2013.02.032

    • 査読あり
  • [学会発表] 高温高圧反応による新規化合物NaGe2 の合成と構造

    • 著者名/発表者名
      渡邊江里佳,福岡宏,犬丸啓
    • 学会等名
      第53回高圧討論会
    • 発表場所
      大阪大学豊中キャンパス
  • [学会発表] Na-Ge 系化合物の高圧合成と構造

    • 著者名/発表者名
      渡邊江里佳・齋藤大祐・友光佑介・福岡宏・犬丸啓
    • 学会等名
      第51回基礎科学討論会
    • 発表場所
      仙台国際センター
  • [学会発表] 非シェブレル型硫化物Mo3S4の結晶構造と電子軌道計算

    • 著者名/発表者名
      福岡 宏・舛岡紅実・花岡輝彦・犬丸 啓
    • 学会等名
      日本セラミックス協会 2013年 年会
    • 発表場所
      東工大 大岡山キャンパス
  • [学会発表] 高温高圧反応を用いた強相関系化合物CeGexSn3-x (0≤x≤3)の合成と構造および物性評価

    • 著者名/発表者名
      堀野豊・福岡宏・犬丸啓
    • 学会等名
      日本セラミックス協会 2013年 年会
    • 発表場所
      東工大 大岡山キャンパス

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi