研究課題/領域番号 |
24550234
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
宮崎 敏樹 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 准教授 (20324973)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 骨セメント / 有機-無機ハイブリッド / 生体活性 / ポリイオンコンプレックス |
研究概要 |
今年度はアルギン酸,ポリグルタミン酸などのアニオン性高分子粉末と,キトサンなどのカチオン性多糖類水溶液を成分としたセメント状材料の作製を試みた。その結果,混練により常温で硬化する材料が得られた。粉液比の増加に伴い,以下の傾向が認められた。(1)粉末と液体を練和したときに得られる試料の形態は,ペースト状からより水分の少ない粘土状に変化した。(2)硬化時間が短くなる傾向が見られた。(3)長軸方向のひずみが小さくなる傾向が見られ,より硬質の硬化体が得られることが分かった。但し,得られた硬化体は圧縮強度が10MPaに満たなかった。医用材料としての応用にはさらなる強度の向上が求められる。また,擬似体液環境下に置いたところ硬化体が膨潤し,崩壊する結果となった。 そこでリン酸カルシウムセメントの主成分であるリン酸4カルシウムとリン酸水素カルシウム2水和物,ならびに生体吸収性セラミックスであるリン酸3カルシウムを添加したところ,圧縮強度が改善された。また,従来のリン酸カルシウム系骨セメントに比べて,骨に近いヤング率を有する試料が得られた。同セメントは擬似体液中でアパタイトを析出することが分かった。これは骨と結合する可能性があることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で提案した,イオン性高分子のポリイオンコンプレックスによる新規自己硬化性材料の創成について,予想通りの硬化特性を示す材料が得られており,材料設計としては順調に進展していると判断される。また生体環境下でのアパタイト形成も観察されており,生体親和性を付与できる可能性も見出されている。ただし,機械的強度について課題も明らかになっているので,次年度以降はこれらの点について改善を試みる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在より圧縮強度を高めるため,ガラス粉末やリン酸カルシウム粉末などの添加などを試みる。またこれらフィラー粒子の微細化を行い,粉末の粒径との関連性を追究し,機械的強度向上のための基礎的条件確立を図っていく方針である。また,高分子のイオン架橋を利用した歯科用グラスアイオノマーセメントの硬化機構もあわせて導入し,生体環境下での安定性向上を図っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究においては,自己硬化性や,生体環境下でのアパタイト形成能を示す組成の探索が,想定していた実験条件数よりも少なくて済んだため,未使用額が発生したものである。本年度の研究において,機械的特性の改善に関する課題が明らかになっている。これらの解決を図るためには,固液比や無機フィラーの添加量,高分子の官能基密度などいくつかのパラメーターに沿って組成依存性を細かく調べる必要があり,また統計的信頼性を得るため多くの試料作成が必要になると予測される。次年度研究費は,未使用分も含め,主にこれらの試料作成,評価の項目に重点的に使用する予定である。
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