研究課題/領域番号 |
24550234
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
宮崎 敏樹 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 准教授 (20324973)
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キーワード | 有機-無機ハイブリッド / 骨セメント / 擬似体液 / 骨親和性 / 機械的特性 / グラスアイオノマーセメント |
研究概要 |
前年度作製したポリグルタミン酸を添加した歯科用グラスアイオノマーセメントにおいて,フィラーとなるセラミックス粒子の焼成の影響について調べた。その結果,焼成温度の上昇に伴い,硬化速度が遅くなる傾向が認められた。これは硬化反応に寄与する水酸基の量の減少や,硬化の引き金となるフィラー表面の溶解速度が低下し,ポリグルタミン酸との架橋反応速度が低下したためと推察された。焼成による結晶化はフィラーの機械的強度上昇に寄与するので,今後これらの最適化によりグラスアイオノマーセメントの特性改善が期待できる。 また,今年度はアクリル樹脂系骨セメントの骨親和性改善に取り組んだ。すなわち生体内で石灰化に寄与しているリン酸基と,重合基であるビニル基を含有するエステルを複数種選択し,従来型のポリメチルメタクリレート系骨セメントにカルシウム塩とともに添加してラジカル重合させた。カルシウム塩の添加は生体環境での石灰化の促進を図ったものである。その結果,適切な添加量であれば,生体用セメントして適切な硬化時間や機械的特性を示すことが分かった。また,生体環境を模擬した擬似体液中で旺盛な石灰化が認められた。但し,多量のエステルの添加は機械的強度や石灰化能力をむしろ低下させることが明らかとなった。 以上のように,生体応用されているグラスアイオノマーセメントやポリメチルメタクリレート系骨セメントの骨組織親和性を向上させるための基礎的条件が,分子制御の観点から明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機高分子修飾によるデザインを用いれば,歯科用グラスアイオノマーセメントだけでなくポリメチルメタクリレート系骨セメントの骨親和性も向上できることが今年度の研究から明らかとなり,幅広い生体材料に応用可能である分子修飾に関する知見が得られる見込みが立ったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後はグラスアイオノマーセメントにおける体液環境下での反応機構をより詳細に解明すると共に,ポリメチルメタクリレート系骨セメントでの石灰化物質の結晶構造を詳細に調査し,生体適合性向上のための指針構築につなげたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
予想していたよりも少ない実験条件で当初の目標としていた物性を得ることができたため。 26年度は,機械的特性の精度・信頼性向上や,反応機構の解析に25年度よりも多数の試料作成が必要になると予測されるので,これらの解析等に使用する。
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