研究課題/領域番号 |
24550235
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
嶺重 温 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00285339)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | イオン伝導体 / 燃料電池 / アパタイト |
研究概要 |
本年度はアパタイト型イオン伝導体セラミックスのX線構造解析を行い、酸化物イオンの熱振動挙動を詳細に観測し、伝導経路の推定を行った。SPring-8において測定したAlドープランタンシリケートの粉末X線回折測定データの構造解析により精密化された各サイトの酸素の非等方性温度因子に着目すると、それぞれにイオン伝導性と関係する特徴が見られた。結晶のc軸上に位置するO4はc軸方向に大きく振動し、この方向にO4を介してイオンが移動し易いことが分かった。一方、構造中でSiO4四面体を構成している酸素のうちO4に近いO2は、O4方向に向かって振動していた。O4ならびにO2は他の酸素(O1およびO3)と比べて振動の程度は大きく、結晶中の酸素にはイオン伝導と密接に関係するものと必ずしもそうでないものが存在することが明らかとなった。O2の振動はAlドープによって大きくなる傾向があり、O2原子の熱振動の増加がAlドープによるイオン伝導性向上と対応していることが示唆された。さらにAl置換固溶によりSiO4四面体に属するO2はSiから離れやすくなるという結果が得られ、それによってc軸に垂直な方向のイオン伝導が促進されると推測された。以上がAlドープによる伝導性向上の一因となっていると考えられた。さらに伝導機構解明に向けては酸素を含む振動モードをin-situで観測することも重要であるが、今年度高温下でのラマン分光測定手法の確立が行えた。一方、本材料の非等方的なイオン伝導機構を考察するには配向体を作製し、上述の手法を適用することが必須である。本年度は溶融ガラスの結晶化手法を用い、伝導度の高いc軸方向に配向度90%以上で優先配向させたイオン伝導体を作製することに成功した。究極の配向体である単結晶についても非常に微小なものについては作製が可能となり、今後成長の条件を検討してバルク単結晶を得る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アパタイト型イオン伝導体セラミックスの構造解析により、それぞれのサイトの酸素のイオン伝導に対する役割を明確にできた。またAlドープによるイオン伝導性向上機構についても解明され、当該材料のイオン伝導機構の全容解明に迫る重要な成果を得た。さらに高温下でin-situラマン観測を行える体制も整ったことから、次年度には酸素振動モードからの考察が行えるものと期待される。加えて伝導度の高いc軸方向に高度に配向したイオン伝導体の作製が行え、また単結晶についても作製が可能となり、バルク単結晶を得るための方針も決定された。以上より、多結晶を用いた構造解析によってイオン伝導機構について重要な知見が得られたことに加え、今後の単結晶を用いた評価に向けて測定、試料の両面の準備が整ったことから、次年度以降にアパタイト型高速イオン伝導体における非等方的イオン伝導機構の解明に向けた取り組みが着実に実施できるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はアパタイト型イオン伝導体の配向体を用いたX線構造解析、ラマン分光測定を行って酸化物イオンの熱振動挙動を詳細に観測し、伝導経路についての考察を行う予定である。さらに二次イオン質量分析器を用いた同位体酸素拡散プロファイル測定を実施し、結晶の各軸方向のイオン輸送を詳細に評価する予定である。単結晶のバルク体を得るための取り組みとしては、フラックス法を適用し、結晶核生成時間を短縮することにより結晶のサイズがかなり大きくなることを見出しており、次年度その条件を用いた作製を検討し、バルク単結晶を得る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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