最終年度である平成26年度では、三軸磁場配向を実現できる物質的選択の自由度を検討することを目的として、 結晶粒レベルで導入される双晶構造をもつ希土類系高温超伝導物質REBa2Cu3O7-y(RE123)の三軸磁場配向 を試みた。すでに、双晶を含まないREBa2Cu4O8およびRE2Ba4Cu7O15-yの三軸磁場配向については知見が得られたことから、これらの配向軸や配向度と比較しながら、双晶を含む結晶粒の回転変調磁場下における配向挙動を明らかにした。具体的には、配向軸が真逆の関係にあるY123およびEr123の固溶体を作製し、10テスラの間欠回転磁場下(室温、エポキシ樹脂中)で配向させたところ、6%のErドープ量で磁化軸が転換しEr123の磁気異方性がY123のそれより16倍大きいこと、圧粉成型体作製過程を含んだ焼結体を粉砕することで配向度の高い状態が実現できることがわかった。10テスラの磁場では、Y123およびEr123は約5度程度の面内配向度、約2度のc軸配向度が実現できるが、低磁場になるとY123の配向度の低下が著しく低い磁気異方性を反映している。このように、双晶を含まない場合の面内配向度(~2度) よりも若干低下するもの物、双晶が導入されている結晶粒を用いても三軸結晶配向が十分実現できることがわかった。RE種や酸素アニール過程の最適化などでさらなる配向度の向上が期待できることを意味する成果である。
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