研究課題/領域番号 |
24550240
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研究機関 | 倉敷芸術科学大学 |
研究代表者 |
草野 圭弘 倉敷芸術科学大学, 芸術学部, 教授 (40279039)
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研究分担者 |
福原 実 岡山理科大学, 工学部, 教授 (20150815)
高田 潤 岡山大学, 自然科学研究科, 特任教授 (60093259)
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キーワード | セラミックス / 陶磁器 / 備前焼 / 酸化鉄 / スピネル / 微構造 |
研究概要 |
備前焼作家である連携報告者から提供された「金彩」および「銀彩」備前焼について、呈色構成相と微構造を電子顕微鏡により検討した。金彩模様中の結晶相は、~500nm径のアルファ-Fe2O3(ヘマタイト)粒子が凝集した多結晶体であることがわかった。更に、電子線回折の結果、配向性の高い凝集体であることがわかった。金彩備前焼の断面試料について、詳細に電子顕微鏡観察を行った結果、ヘマタイトは試料の表面に生成したガラス相の表面に生成しており、厚さは約90nmであることがわかった。 登り窯における金彩備前焼の作製条件について調査した結果、備前焼粘土と稲わらを大気中で焼成した後、木材や炭を投入し還元雰囲気下で冷却すると、稲わらと接触していた部分が金色などに呈色しやすいことがわかった。また、室温まで還元雰囲気下で冷却すると、備前焼表面は灰色や黒色となるため、1000℃付近で窯内を酸化雰囲気にする必要があることがわかった。この酸化は、ガラス中に溶融している鉄イオンをヘマタイトとして析出させるためであると考えられる。これらの結果を基に電気炉による再現実験を行っている。 銀彩備前焼の発色構成相は、酸化鉄とMg-Al-Fe-O系化合物であることを見出している。このMg-Al-Fe-O系化合物について詳細に検討した結果、スピネル(MgAl2O4)のAlサイトにFeが置換した化合物(鉄置換スピネル)であることがわかった。酸化鉄と鉄置換スピネルには結晶学的な方位関係が存在するため、現在詳細に検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画通り、おおむね順調に進展している。連携研究者から提供された金彩および銀彩備前焼について、発色構成相および微構造を明らかにすることができた。 備前焼作家である連携研究者の協力を得て、備前焼表面に金や銀色に呈色しやすい焼成条件が明らかになった。 以上の結果を基に、現在電気炉による再現実験を行っており、今年度は概ね達成できたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の調査結果を基に継続して再現実験を行う。酸素分圧の制御が可能な電気炉にて、金彩・銀彩備前焼の再現を試みる。備前焼作家が使用している種々の備前焼粘土を用い、種々の酸素分圧下で熱処理して金彩・銀彩備前焼の再現を試み、これらの形成条件を確立する。 上記で得られた試料について、粉末X線回折による生成相を同定し、電子顕微鏡観察により発色構成相の組成、微構造および結晶の方位関係を明らかにする。また、分光測色計により試料表面の色調をデジタル化し、連携研究者から提供された金彩・銀彩備前焼と比較し、相違点を明確にして模様の再現実験にフィードバックする。 更に、油滴天目表面の金属光沢模様の構成相と微構造を解明し、金彩・銀彩備前焼との相違点を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の研究発表および調査費として計上していた旅費が過剰であった。 試料作製および評価のための消耗品費、得られた結果を公表するための論文校閲・印刷費に振り分ける。
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