研究課題/領域番号 |
24550242
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
村瀬 至生 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 研究グループ長 (60358158)
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研究分担者 |
安藤 昌儀 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (20356398)
川崎 一則 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (40356837)
細川 千絵 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (60435766)
鎌田 賢司 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 主任研究員 (90356816)
伊藤 民武 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (00351742)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 金 / ナノ粒子 / プラズモン / 量子ドット / 蛍光 / 増強 / ガラス / 計算 |
研究概要 |
今までの高発光効率量子ドット分散ガラス微粒子作製技術を生かして、金属ナノ粒子を一定の厚みのガラス層で覆い、その周りに量子ドットを配置することで、プラズモン共鳴により大きな蛍光増強効果を得ようとしている。 作り易さ及び安定性から、まずは金ナノ粒子を選択し、その周りを均一なガラス層で覆うことを目指した。文献から、シランカップリング剤を使い逆ミセル法を適用するなどの方法があることがわかっている。しかし、これまで量子ドットの表面コートで自分たちが行ってきたより簡便な方法を試すこととした。これは、水分散性の金ナノ粒子を多量のエタノール中に分散させ、さらにアルコキシド(テトラエトキシシラン、ゾル‐ゲル反応の原料)およびアンモニアを添加、撹拌して反応させる方法である。 この方法では、金ナノ粒子表面のクエン酸を、加水分解したアルコキシドで直接に置換する。類似の方法は金および銀のナノ粒子のガラスコートで報告されていたが、粒径が50nm程度と比較的大きなものに限られていた。より強い増強効果が期待できる小さい粒径(10nm程度)で、系統的に実験条件を確かめた文献は見当たらなかった。試行錯誤の後、コーティングには、金ナノ粒子作製時にできる副生成物濃度が大きくかかわっていることがわかった。精製により副生成物の濃度を数百分の1程度に減らしたときに、金ナノ粒子の凝集が防がれ均一なガラス層で覆われることがわかった。精製しすぎるとガラス層が形成されにくく、また再現性が低下した。 量子ドット作製では、各種のCdSe系(Teの量などを変えたもの)を作製した。また、プラズモン共鳴による蛍光増強の理論の論文を調査し、特定のモデルに基づく計算をMathematicaを用いて自分達でも行い、最適条件を得るための考察を進めた。球対称の形状を作製するため、数値計算よりも解析的な方法で行う方が好ましいと判断している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
直径10nm程度の金ナノ粒子を作製し、それをガラス薄膜で均一に覆うための条件を見出すことができた。また、各種発光波長の量子ドットの作製にも成功した。特定のモデルに基づく、プラズモン共鳴による増強蛍光の理論計算の手法も習得し、Mathematicaを用いて自分たちの系での計算を行っている。これらの状況により、プロジェクトは全体としておおむけ順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、膜厚10-50nm程度のガラス球が得られているが、ガラス球に入る金ナノ粒子の数を必ず1つにして均一な膜厚を再現性良く得るためには、もう少し実験を続けて条件出しを行う必要がある。蛍光増強を得るためには、膜厚10nm程度が最適であると予想されるので、さらに薄い膜厚のガラス球を得るための条件出しも行う。 次に、ガラス球の表面に量子ドットを吸着させる実験を開始する。ガラス表面はマイナスに帯電しており、作製した量子ドットもマイナスに帯電しているので、このままでは吸着しない。どちらかにアミノ基を付けるなどしてプラスの電荷を与えて吸着させ、さらに凝集と発光効率の低下を防ぐ手法を開発する。作製したガラス球を透過電子顕微鏡などで観察し、吸着した量子ドットの数を見積もる。 理論計算では、蛍光増強が得られる最適の条件を探る。量子ドットの発光効率、励起及び発光波長、ガラス層の厚みなどがパラメーターとなる。 さらに、蛍光増強の程度を見積もる実験方法についても考察する。散乱による効果を除き、量子ドット単独での発光効率を見積もる手法を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は、実験装置が産総研内の別の拠点にあったため実験が当初の計画通りには進まず研究費をH25年度に繰り越すこととなった。このため、H25年度は研究体制の再構築から始め、契約職員を雇用して実験回数を増やし、研究を加速する。蛍光増強の計算は、実験との対比がどの程度可能かがわからないので、場合により外部の専門家とのディスカッションを進めるために、旅費を使用する。
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