研究課題/領域番号 |
24550244
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪市立工業研究所 |
研究代表者 |
渡瀬 星児 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, その他部局等, 研究員 (60416336)
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研究分担者 |
松川 公洋 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, その他部局等, 研究員 (90416321)
渡辺 充 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, その他部局等, 研究員 (70416337)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ハイブリッド / シルセスキオキサン / 薄膜材料 / ダイオード / 整流素子 / チオールエン反応 / ゾルゲル反応 |
研究概要 |
本研究では、シルセスキオキサンにホールまたは電子輸送性を示す化合物をハイブリッド化したハイブリッド半導体の創製と、これにりん光発光性の金属錯体を共ハイブリッド化したりん光ハイブリッド薄膜を作製することにより、これを発光層に用いたハイブリッド電界発光素子の構築を目的としている。平成24年度は、シルセスキオキサンへの有機半導体または無機半導体を分子レベルまたはナノレベルでハイブリッド化したハイブリッド半導体を用いてダイオード素子を作製し、ダイオード特性の評価を行った。 副生成物や不純物の原因となりうる反応試剤を用いることなく、光または熱により容易に反応が進行するチオールエン反応を利用して、ホール輸送性を示すことが知られているカルバゾール基を導入したトリアルコキシシランを新たに合成した。これを酸触媒の存在下で加水分解を行い、引き続き重縮合を行うことで、有機基にカルバゾール基を有するシルセスキオキサンを合成した。 導電性基板上に形成したn型半導体の酸化亜鉛薄膜上にスピンコートによりシルセスキオキサン薄膜を積層し、さらにその上に電極としての金属を蒸着することでダイオード素子を作製した。 この素子の電流-電位特性を調べたところ、一方向にしか電流を流さない顕著な整流性を示すことがわかった。電流値は薄膜の膜厚に依存して変化し、膜厚が薄いほど大きな電流が流れることが分かった。他の有機基を導入したシルセスキオキサン薄膜を用いたダイオード素子についても検討したところ、電流の値や立ち上がり電圧に違いはあるものの、必ずしもカルバゾール基を有していなくても、整流性を示すことを確認した。このことから、シルセスキオキサン薄膜を用いた素子がダイオードとして働くことを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ケイ素系高分子であるシルセスキオキサンは、例えば有機TFTのゲート絶縁膜として利用されるなど、少なくとも厚膜の状態では絶縁体として振る舞うものと一般的には考えられていた。しかし、本研究により、シルセスキオキサンを薄膜化すること、さらにはカルバゾール基のような電気的性質に優れた官能基を導入することによって半導体として振る舞うことを明らかにすることができ、シルセスキオキサンをベースとするハイブリッド薄膜のプリンタブル半導体としての応用展開の可能性を示唆することができた。今年度は、本研究の中で最も困難が予想された課題を乗り越えることができ、目標達成に向け大きく前進することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、この電気的性質の改善したシルセスキオキサンと金属錯体とのハイブリッド化によるりん光ハイブリッド薄膜の作製について検討を行うとともに、シルセスキオキサンの有機基が金属錯体の発光特性に及ぼす影響や効果、必要に応じて添加剤の共ハイブリッド化による影響や効果について検討する。また、りん光ハイブリッド薄膜を用いた電界発光素子の構築とその発光特性の向上に向けた検討も合わせて行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
予期できない為替の変動に伴う急激な円安によって、次年度に予定している国際会議の経費の増加が心配されたため、本年度の研究の妨げにならない範囲で若干の予算を残した。残金は次年度の研究経費として物品購入費等ですべて使用する予定である。次年度の直接経費150万円(当初計画)は、物品費に80万円、旅費に50万円、その他に20万円を予定しており、残金も合わせて全額を年度内に執行する予定である。
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