研究課題/領域番号 |
24550246
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
斎藤 拓 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90196006)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 高分子 / ポリプロピレン / 超臨界二酸化炭素 / 延伸 / 配向 / 結晶化 / 相分離 |
研究概要 |
超臨界二酸化炭素雰囲気下で高分子フィルム試料に振動を印加できる装置の試作を行うとともに、既設の超臨界延伸装置を用いて装置完成後の適切な温度・圧力条件の探索を行った。 1)振動印加装置の試作では、大延伸可能な超臨界延伸装置のモーターと歯車を取りかえ、チャックにヒズミゲージを取り付けて動的ひずみ測定器で信号を検出することで微小変形に対する応力測定を可能にした。この装置に種々の振動子を取り付けて、フィルム試料への周期的な振動を印加できる可能性について調べた。 2)既設の超臨界延伸機を用いて、種々の二酸化炭素圧力下においてポリプロピレン(PP)フィルム試料に二酸化炭素を十分に含浸させた後に、二酸化炭素雰囲気下で溶融させ、結晶化できる温度に冷却した後に剪断を印加して等温熱処理することで、配向結晶化させた。大気圧下では剪断方向に対して平行方向にフィブリル構造が形成されるが、2MPaの二酸化炭素雰囲気下では剪断誘起相分離が発現して、剪断方向に対して垂直方向に密度揺らぎに由来するマイクロメートルオーダーのバンド状構造が形成されることを見出した。二酸化炭素雰囲気下での剪断誘起相分離の発現は、PPと二酸化炭素の分子運動性の違いで動的非対称性が生じたことによると考えられる。剪断誘起相分離を経て得られた結晶化PPでは、結晶化度が73%の高結晶化度となり、融解温度も大気圧下で得られた試料に比べて5℃以上も上昇することがわかった。剪断誘起相分離により結晶化が誘発され、促進されたために、高結晶化度かつ高融点の結晶化PPが得られたと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超臨界延伸機を用いて、1)高圧二酸化炭素雰囲気下で溶融高分子フィルムの配向結晶化をさせることを可能にさせた、2)ある二酸化炭素圧力下でポリプロピレンを配向結晶化させると剪断誘起相分離が生じることを見出すことができた、3)剪断誘起相分離を経て配向結晶化させることで高融点かつ高結晶化度のポリプロピレン結晶を作製することができた、ことから新材料創製としての研究は順調に進展していると言える。 また、振動印加装置の試作でも、大微小変形に対する応力測定が可能になり、振動子を取り付けてフィルム試料への周期的な振動の印加できる可能性を確認している段階まで進んでいることから、順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度に試作した装置を調整して、超臨界流体下でフィルム試料への周期的な振動を印加して、その応答を検出することで貯蔵弾性率や損失弾性率の動的粘弾性測定を可能にさせる。また、装置の改造により振動印加中に延伸させることも可能にさせる。 平成24年度の成果から得られたポリプロピレンの配向結晶化の知見に基づいて、種々の二酸化炭素圧力、温度において振動印加させて動的粘弾性測定を行い、剪断誘起相分離が生じる条件と動的粘弾性特性の関係について考察する。また、結晶鎖が動きやすくなる温度ー周波数の関係を調べる。これら、剪断誘起相分離が生じる、あるいは結晶鎖の動きやすくなる温度・圧力・周波数下で振動を印加させながらポリプロピレンフィルム試料を熱延伸して、その配向結晶化試料を作製する。得られた試料の広角X線および小角X線散乱測定、DSC測定の結果に基づいて作製された試料の特異性について考察する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|