研究課題/領域番号 |
24550246
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
斎藤 拓 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90196006)
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キーワード | 高分子 / ポリフッ化ビニリデン / 超臨界二酸化炭素 / 延伸 / 結晶 / 変形回復 / 光散乱 / 小角X線散乱 |
研究概要 |
超臨界二酸化炭素雰囲気下で高分子フィルム試料に振動を印加できる装置の試作を行うとともに、装置完成後の適切な温度・圧力条件の探索のために既設の超臨界延伸装置を用いて超臨界二酸化炭素雰囲気下での高分子の変形・回復性について調べた。 1)振動印加装置の試作では、既設の大延伸可能な超臨界延伸装置に対してモーターと歯車の異なる装置を組み立て、また、チャックにヒズミゲージを取り付けて動的ひずみ測定器で信号を検出することで微小変形に対する応力測定を可能にした。 2)超臨界二酸化炭素雰囲気下での高分子の変形・回復性については、既設の大変形可能な超臨界延伸機を用いて、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム試料をひずみ100%延伸して延伸―変形回復挙動を調べた。大気圧下ではネッキングを生じてほとんど変形回復性を示さないのに対して、高圧CO2雰囲気下ではネッキングせずに試料全体で均一に伸長して、その後の変形回復により残留ひずみが約35%になるまで大きく収縮することが見出された。四つ葉状のHv光散乱像が観察されるPVDF球晶を大気圧下あるいは低圧CO2下で延伸すると球晶がフィブリル化するために赤道方向に長いストリーク状の散乱像が観察されるのに対して、5MPaよりも高い高圧CO2雰囲気下では球晶構造に由来する四つ葉状散乱が得られ、歪み100%の塑性領域まで延伸したにも関わらず、フィブリル化せずに球晶構造が維持されることが明らかになった。小角X線散乱の結果から、大気圧下で得られた試料ではフィブリル構造に由来する赤道方向へのストリーク状散乱像が得られたのに対して、高圧CO2雰囲気下ではラメラ晶間の非晶領域が引き伸ばされて形成された空隙による子午線方向に長い散乱像が得られたことから、ラメラスタックの秩序性が保たれることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究テーマである高分子に弾性変形域内で振動を印加させるという発想を、高分子を塑性変形域で変形させた後の変形回復性を明らかにするという研究に発展させることができた。その発展的な研究を行うことで、超臨界二酸化炭素雰囲気下において結晶性高分子のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を変形させると大きく変形回復するという、平成24年度とは全く異なる新しい現象を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24-25年度に試作した装置を調整して、超臨界流体下でフィルム試料への周期的な振動を印加して、その応答を検出することで貯蔵弾性率や損失弾性率の動的粘弾性測定を可能にさせる。また、装置の改造により振動印加中に延伸させることも可能にさせる。 平成24年度の成果から得られたポリプロピレンの配向結晶化の知見、平成25年度の成果から得られたポリフッ化ビニリデンの変形回復性の知見に基づいて、種々の二酸化炭素圧力、温度において振動印加させて動的粘弾性測定を行い、ポリプロピレンの剪断誘起相分離やポリフッ化ビニリデンの変形回復性が生じる条件と動的粘弾性特性の関係について調べる。振動印加させた得られたポリプロピレン結晶やポリフッ化ビニリデン結晶の高次構造や物性の特異性について考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
326円という中途半端な金額で購入できる物品を見つけることができなかったため。 超臨界延伸に必要なゲージ(5000円程度)あるいは接着剤(3000円程度)の購入の一部として使用する予定である。
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