ポリプロピレン(PP)フィルム試料に二酸化炭素を十分に含浸させた後に、二酸化炭素雰囲気下で溶融させ、結晶化できる温度に冷却した後に剪断を印加して等温熱処理することで、配向結晶化させた。大気圧下では剪断方向に対して平行方向にフィブリル構造が形成されるが、2MPaの二酸化炭素雰囲気下では剪断誘起相分離が発現して、剪断方向に対して垂直方向に密度揺らぎに由来するマイクロメートルオーダーのバンド状構造が形成されることが見出された。二酸化炭素雰囲気下での剪断誘起相分離の発現は、PPと二酸化炭素の分子運動性の違いで動的非対称性が生じたことによると考えられる。剪断誘起相分離を経て得られた結晶化PPは高結晶化度となり、融解温度も大気圧下で得られた試料に比べて5℃以上も上昇することがわかった。剪断誘起相分離により結晶化が促進されたために、高結晶化度かつ高融点の結晶化PPが得られたと考えられる。 ポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルム試料を大気圧下で延伸するとネッキングを生じてほとんど変形回復性を示さないのに対して、高圧二酸化炭素雰囲気下では応力が著しく低下してネッキングせずに試料全体で均一に伸張して、その後の変形回復により残留ひずみが小さくなることが見出された。小角X線散乱の結果から、大気圧下で得られた試料ではフィブリル構造に由来する赤道方向へのストリーク状散乱像が得られたのに対して、高圧二酸化炭素雰囲気下ではラメラ晶間の非晶領域が引き延ばされて形成された空隙による子午線方向に長い散乱像が得られたことから、ラメラスタックの秩序性が保たれることが示唆された。それに対して、ガスバリア性材料では応力の低下は見られず、逆に材料中に含まれている水が二酸化炭素により抽出されることで応力が低下することも見出された。
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