研究課題/領域番号 |
24550247
|
研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
矢島 知子 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (10302994)
|
キーワード | 高分子材料合成 |
研究概要 |
我々はこれまでに、電子不足ジエンとジヨードペルフルオロアルキルの光ラジカル付加反応による新規フルオロアルキル-ハイドロカーボン交互型ポリマーの合成法を見出している。本研究においては、この反応にジエン部に不斉点を導入することにより、キラルな交互型ポリマーを合成し、その物性・構造を明らかにし、機能性材料としての可能性を見出すことを目的としている。 昨年までに、置換位置の異なるシクロヘキサンジオールをアクリル化したジエンと、ジヨードペルフルオロアルキルとの反応を行い、その反応性について明らかにしていた。しかし、キラルなシクロヘキサンジオールの入手が困難であったことから、今年度は、シクロヘキサン-1,2-ジアミンを用いた反応について検討を行った。まず、キラルなジアミンをアクリル化し、ヨードペルフルオロアルキルとのラジカル付加反応を行い、低分子量の化合物についての物性を明らかにした。このとき、得られた化合物は多くの溶媒をゲル化し、そのキセロゲルのSEM測定、VCD測定、単結晶X線回折などから、らせん状フィブリルを形成し、高い撥水性を示すことを明らかにした。この知見を基に、高分子化合物の合成を行った。シクロヘキサンジアミンのジアクリル化体とジヨードペルフルオロアルカンとの反応を行い、高分子化合物を得た。ラセミ体を用いたときには、分子量44000、RR体を用いた場合には2214と、原料の立体化学によって、反応性が大きく異なることを明らかにした。また、この生成物のCD測定を行ったところ、ピークが観測された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キラルな新規フルオロアルキルーハイドロカーボン交互型ポリマーの合成およびその物性に関する本研究では、昨年度には、キラルなジエンの調製に手間取り、ジアミンの構造により重合度が異なることは明らかにしたものの、ラセミ体での合成に留まっていた。今年は、入手容易なシクロヘキサンジアミン骨格を導入することにより、この点を改善した。また、モデル基質としてシクロヘキサンジアミン骨格を有する類似の含フッ素低分子化合物を調製し、そのゲル化能等の物性を明らかにすることができた。さらに、この骨格を高分子化合物に適用し、ポリマーを得ることに成功している。残念ながら、キラルな化合物では高い重合度は得られなかったが、今後、置換パターンや、フッ素鎖の長さ、反応条件等を検討することにより、改善を図る。また、各種測定を行うことにより、その物性を明らかにしていくことにより、当初の目標を達成できると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに、シクロヘキサン-1,2-ジアミンを骨格とする、含フッ素低分子化合物が、多くの溶媒をゲル化し、そのキセロゲルが、らせん状フィブリルを形成することを明らかにし、現在、この骨格を高分子化合物に適用している。低分子化合物での挙動が明らかとなっていることから、そのデータと比較することにより、構造の決定、2次構造の推定を引き続き行っていく。また、キラル化合物を用いた際にはラセミ体の時ほど高い重合度が得られなかったことから、構造が大きくことなることが予想され、この点について明らかにするとともに、反応条件の検討、フッ素鎖の長さの検討を行うことにより、より高い重合度を目指す。 また、研究初年度に、1,2付加体よりも、1,4付加体の方が高い重合度を示したことから、これらの置換パターンについても検討を行い、その物性、および構造について検討を行う。これらの得られた化合物について、NMR、CDスペクトル、IR等各種測定を行うことにより、構造の推定および、物性評価を行う。
|