研究課題/領域番号 |
24550248
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
竹下 宏樹 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (80313568)
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キーワード | コロイド結晶 / マイクロゲル / コロイドガラス / 光散乱 / 結晶化 / 高分子ゲル |
研究概要 |
前年度までに得られた知見をさらに深めると共に、単結晶作成のための方法を模索した。 沈殿重合法により合成した単分散の粒径(200~500nm)を有するポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PolyNIPA)マイクロゲルのコロイド結晶化動力学を、紫外可視分光法に加え顕微鏡観察、光散乱法により検討した。 種々の濃度に調整したマイクロゲル分散液のコロイド結晶化過程における全結晶化速度および結晶グレイン成長速度をそれぞれ紫外可視分光法および顕微鏡観察により測定した。全結晶化速度は時間のべき乗で増大し、微重力下の固体コロイド分散系で観察されるものと同様の挙動を示した。また、その温度依存性は、低温側および高温側で速度が低下する典型的な釣鐘型となった。顕微鏡観察により評価した結晶成長速度もまた釣鐘型の温度依存性を示した。希薄分散系における粘度測定および静的光散乱法に基いて求められたゲル体積充填率により結晶化速度を整理した所、結晶化速度の濃度および温度依存性は、体積充填率のみで整理可能なことが明らかとなった。粒子拡散速度低下の影響の小さい高温側における結晶グレイン成長速度は、単純なWilson-Frenkel則でよく説明できることが明らかとなった。 以上により、結晶グレイン成長速度および前結晶化速度が定量的に評価出来、次年度測定する予定の結晶核生成速度と合わせて検討することにより、巨大コロイド結晶を作成するための知見が得られると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き、コロイド結晶化過程における結晶化速度とその条件依存性の定量的評価を行った。順調に必要な知見が得られており、研究は概ね予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られたコロイド結晶化動力学の基礎的な知見をさらに深め、他のコロイド結晶や結晶化一般に関する研究で得られている知見に基づき、この系におけるコロイド結晶化理解のための理論的裏付けを与える。 それと平行して、巨大コロイド単結晶作成の方法論を確立する。大きく分けて二つの方法を取る。第一に、これまでに得られているコロイド結晶の核生成速度とコロイド結晶グレイン成長速度に関する情報に基づき、核生成頻度が低く結晶グレイン成長速度が早い条件を模索する。そのためにはより精密な温度制御が必要となるかもしれない。第二に、温度勾配印加が可能な結晶化セルを作成し、試料中に結晶化駆動力の勾配を発生させることによる結晶の一軸成長を試みる。 上記結晶化動力学制御において、低温への温度ジャンプとその後の加熱によるガラス結晶化過程を用いるかもしれない。そのために、動的光散乱法によりガラス化挙動の検討も必要になってくるであろう。また、結晶グレインサイズとその配向性の評価には、別途入手した静的光散乱装置を改造したものを用いる。 上記方法により、巨大コロイド単結晶の作成可能性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
新任地への異動が決定したため、温度勾配印加が可能な単結晶セル製作業者選定を先延ばしにしたため。次年度以降、新任地において業者選定を行い作製する。 異動先の大学の近隣の金属加工業者を選定、協同し、上記単結晶セルを製作するための費用とする。
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