研究課題/領域番号 |
24550249
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
板垣 秀幸 静岡大学, 教育学部, 教授 (10159824)
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研究分担者 |
澤渡 千枝 静岡大学, 教育学部, 教授 (70196319)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シンジオタクチックポリスチレン / 共結晶 / ゲスト分子 / 物理ゲル / 配向結晶化 / 有機金属錯体 / 偏光蛍光 / シリカナノ粒子 |
研究概要 |
有機金属錯体をゲスト分子とするシンジオタクチックポリスチレン(SPS)共結晶の作製が第一目標である。本年度は、(SPS/ゲスト分子)共結晶の生成条件を明らかにするための原理追求のために、複素環誘導体やアミノ基など非共有電子対をもち金属イオンと錯形成可能な有機分子などを中心にSPSゲルを形成可能な溶媒分子の条件を求めた。その結果、(I) 65種類の溶媒を試みることで、SPS鎖間の自由体積とゲスト分子の物性(分子サイズ・溶解度パラメータ・動的な分子形状など)の相関を明らかにし、ゲル化の条件を確定するに至った。この結果を利用して、(II)(SPS/ゲスト分子)共結晶を生成しうるゲスト分子の分子サイズ・溶解度パラメータなどの諸条件をほぼ確定した。さらに、(III) ピリジン・チオフェンなどの複素環化合物をゲスト分子とするSPS共結晶の作製に成功し、一軸延伸したSPSフィルムに対して同様の処理を実施することでフィルム全体に配向した共結晶の作製にも成功した。これに関連して、(IV) SPSフィルムをゲストとしたい化合物の液体に浸漬すると、溶媒分子がゲスト分子となって共結晶化が起こるとともに、共結晶のフィルムに対する配向性が生じるようなゲスト分子の一群が存在することがわかり、この条件と配向性発現の原因解明が今後の重要課題となる。また、今後、コンポジット状態を含むSPSオルガノメタリックシステム構築のために、①SPSと他のポリマーのブレンドによる配向制御と②シリカナノ粒子・ゼオライトなどの導入を目指した表面改質などにも取り組み、各々の制御方法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(I) 溶媒(ゲスト)分子を変化させてシンジオタクチックポリスチレン(SPS)の溶液化・ゲル化の有無を確認し、SPSのモルフォロジーを確定する計画については、既に、65種類の化合物について確認し、SPSデルタ型結晶の生成過程を明らかにするための原理追求が大きく進展した。その結果、有機金属錯体形成可能なゲスト分子との共結晶化にも成功している。ただし、有機金属錯体ゲスト化自体はH25年度になって開始したところなので、この点については、当初の計画以上とは評価できない。一方、(II)「SPSとシリカ粒子のコンポジットシステムの創製」に向けた、シリカナノ粒子の表面改質やpoly(N-isopropylacrylamide)ゲルへのシリカナノ粒子の共有結合化には成功しており、この部分は計画以上に進んでいる。(III) 共結晶をフィルム全体に対して高秩序で配向させる方法については、一軸延伸などの力学的方法は確定的である一方で、共結晶の配向性が溶媒特性と関係があることが実験的にわかりつつあり、この部分の解明についても当初の計画より進行している。全体的に当初の計画と同等あるいは同等以上に進行している印象が強いが、電導性など、具体的でインパクトのある機能発現を目標としているので、現段階では、このように自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の結果を踏まえ、有用性の高いシンジオタクチックポリスチレン(SPS)共結晶作製を模索しながら、さらに、共結晶をフィルム全体に対して高秩序で配向させる方法を開発する。特に、有機金属錯体ゲスト分子と共結晶化したSPSフィルムの作製が第1目標であり、さらに、それらの配向性フィルムを作製し、電導度や偏光蛍光異方性などの測定を行うのが第2目標である。この場合、結晶配向性の高いポリエチレンテレフタラートやイソタクチックポリスチレンとのブレンドなども配向要因として検討する。さらに、「SPSとシリカナノ粒子あるいはゼオライトなどのコンポジットシステムの創製」を遂行する。SPSのゲル化を、シリカナノ粒子やメソポーラスシリカ・マイクロポーラスシリカなどが分散した有機溶媒で行い、物性を明らかにした上で、この分散状態からキャスト法でフィルムを作製し、SPSとシリカなどのコンポジットを作製し、この構造を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ゲスト分子をシンジオタクチックポリスチレン(SPS)フィルム内に高秩序で配向させる方法を開発するのが大きな目的であるが、SPS自体を含め、ゲスト分子の配向を測定するのに、偏光蛍光角度分布法は極めて有効である。本研究室では新規に購入した新型の蛍光計に付けられる自動偏光蛍光測定装置がないので、本年度は、昨年度の助成金と合わせてこの付属装置の購入を行う。これ以外には、ゲル化やキャストフィルム作製に必要な溶媒・ゲスト分子などと機器測定に必要な消耗品を中心に研究費を使用する予定でいる。
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