研究実績の概要 |
本研究は、透明かつ高気孔率の多孔体であるエアロゲルの化学組成および作製法を拡張し、高い機械的特性や新しい物性・機能をもった有機高分子系エアロゲルの合成法を開発することを目的としている。 平成26年度は、前年度までのシリコーン系エアロゲルの拡張として、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンを用いたエアロゲルの作製を行った。この前駆体はポリシロキサンからなる架橋構造を形成する一方、ネットワーク中にへキシレン架橋部が残り、有機分の多い、従って高い柔軟性をもつゲルが得られることが期待される。出発組成や合成条件を最適化することで、透明かつ低密度のエアロゲルを作製することができ、シリカエアロゲルと比較して高い可逆圧縮変形特性や曲げ強度を示すことが明らかとなった。超臨界流体を用いない常圧乾燥によって、エアロゲル状のキセロゲルが得られる可能性を見出すことができた。 また、有機成分を多く含む疎水性のエアロゲルを作製するために、非水溶媒系におけるポリシロキサンエアロゲルおよびエポキシ樹脂系エアロゲルの作製も検討した。テトラメトキシシランとシラノール末端ポリジメチルシロキサンからなる非水溶媒系からは、不透明ではあるが高い柔軟性を示すキセロゲルを得ることができ、エポキシ化合物とジアミンとの開環付加反応により、不透明ながらサブミクロンオーダーの微細な細孔構造を示す低密度(0.10 g/cm3程度)エアロゲルを得ることができた。 3年間の全研究期間を通じて、有機成分を多く含む/のみを含む数種類のエアロゲルを開発した。ポリシロキサン系、エポキシ系のいずれにおいても機械的な柔軟性および強度の高いものが得られ、微細構造のさらなる最適化を施すことで、よりハンドリング性の良い高性能な断熱材として応用展開が可能であると見込んでいる。
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