研究実績の概要 |
微細発泡体の多くは高度に乳濁しており、光学的手法による分析は極めて困難である。また変形が容易で破壊しやすい事から、厚みや弾性率の機械的測定には問題点が多い。また真空処理を伴う電顕観察では試料本来の状態を知る事が困難である。本研究では、一般的に用いられる水中音響の問題を克服した解析手段、すなわち空中伝搬超音波スペクトロスコピーを開発する事で、微細発泡体フィルムの非破壊オンライン解析法を開発し産業界に貢献すると共に、基礎学術的にはバルクの物性と気泡界面の物性で決まる発泡体の構造形成メカニズムについて検討することを目的とした。 最終年度の平成26年度は、エアボーンセンサーに高圧パルスを印加することで空中に超音波を励振し、薄膜を通った超音波をデジタイザで記録し、独自のデータ解析システムで膜厚や物性を評価した。試料には多孔質フィルムのモデル系として、孔径の異なる(0.5, 0.8, 1.0, 3.0 μm)のポリテトラフルオロエチレンのメンブランフィルタを用いた。キャリブレーションには既知の厚みの銅箔やガラス板を用いた。試料の厚みが超音波の波長よりも薄いため、薄膜内の多重反射を想定したモデルをあらかじめ準備しておき、試料の厚みや多孔質度の関数としてフィルムの弾性率を評価した。以上の結果より、水中での測定と同様に空中における超音波スペクトロスコピー測定が可能である事がわかり、多重反射共鳴理論によるフィッティング解析から、試料の厚みや多孔質度の定量的評価が可能となった。
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