研究課題/領域番号 |
24550257
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山本 隆 山口大学, 理工学研究科, 教授 (00127797)
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キーワード | 高分子結晶化の標準モデル / らせん高分子の結晶化 / 結晶化における分子認識 / 流動場での結晶化と繊維形成 / 高分子結晶の大変形の分子機構 / 高分子のトポロジーと結晶化機構 |
研究概要 |
高分の結晶化を分子レベルで理解し、その微視的および巨視的な構造を制御することは、高分子材料設計の基礎である。高分子結晶化には、美しい「標準モデル」で表わされる極めて普遍的な側面と、螺旋高分子などの特異的な「分子認識」で代表されるような個性的な側面がある。しかし、これらの分子レベルでの起源の解明は現在でも非常に困難な問題である。本研究では、実験的研究における閉塞状態を打破するため、分子シミュレーションを用いて、高分子結晶化の標準モデルの確立、螺旋高分子の結晶化と特異な分子認識メカニズムの解明、流動場における結晶化、分子トポロジーと特異な結晶化機構など、を解明することを目指している。以下に、2013年度における研究の進捗状況の要約を項目別に記す。詳細は、次項“現在までの達成度”を参照。 ①高分子結晶化の標準モデルの確立;研究は着実に進行し、論文として発表した。現在、更なる深化を目指して研究中である。 ②流動場における結晶化;流動と変形下での高分子結晶化の微視的過程、および生成され繊維構造の力学的性質に関する研究を完成させ、論文発表した。 ③螺旋高分子の特異的な分子認識のメカニズムの解明;長期にわたる研究成果をまとめ、論文を作成し、掲載が確定した。 ④分子トポロジーと結晶化;探索的な計算を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究プロジェクトでは、次の四つの大きなテーマを設定した。①大規模計算による高分子結晶化の標準模型の確立、②らせん高分子の結晶化と分子認識機構の解明、③流動場での結晶化と分子配向秩序形成のメカニズム解明、④グラフト鎖結晶化のメカニズム解明と共役系高分子への挑戦。 ①大規模計算による高分子結晶化の標準模型の確立:十数万原子からなるモデル高分子系(理想化ポリエチレン)に対してマイクロ秒に及ぶ分子動力学を実行し、融点近傍での結晶化、および大きな過冷却状態でのガラスからの結晶化の微視的過程が明らかにし、論文を出版した。 ②らせん高分子の結晶化と分子認識機構の解明:配向状態からの結晶化を直接観測することに成功し、そのデータ解析から、らせん高分子の興味深い結晶化過程を明らかにした。最近、論文の掲載が決まった。 ③流動場での結晶化と分子配向秩序形成のメカニズム解明:モデル高分子に対して、流動場で高度に配向した液体を作成し、そこからの結晶化過程を観測することに成功した。分子鎖が規則正しく結晶化し、秩序的な積層ラメラ構造の発現過程を観測した。生成された繊維構造の力学的大変形過程の詳細な解明も行った。研究経過の一部は論文に掲載された。 ④グラフト高分子の結晶化メカニズム解明と共役系高分子への挑戦:線状高分子の結晶化の計算科学的研究は既に一般的になりつつある。しかし、実験的には様々な特異なトポロジー構造を有する高分子の研究が盛んに行われており、その結晶化機構は非常に重要な技術(高分子エレクトロニクス)の基礎となりつつある。本プロジェクトでも、計算科学的なアプーチによる挑戦を目指している。単純な枝分かれ構造を有するモデル高分子の秩序化過程に関する予備的なシミュレーションを行った。モデルの改良と本格的な計算の実行を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
研究は概ね順調に進んできた。“高分子結晶化の標準模型”と“流動結晶化”に関しては、論文発表も済んだ。今後は、前者の課題に関しては新たな課題(メルトメモリー効果)に取り組む。後者では、より大きな系での大規模計算を予定している。 “らせん高分子の結晶化と分子認識”は、一応の成果を得、論文を作成したが、十分な理解への道筋はまだまだ困難が予想され、新たな戦略で望む。 “高分子のとポロジーと結晶化”は、今年度中に成果を得ることを目指す。 新たな高速計算機の導入と大規模プログラムの開発は、メモリー共有型のマルチCPUを用いた並列計算だけが順調に進んでいる。GPGPUの早期立ち上げとプログラム開発を急ぎたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
従来の計算設備の利用で研究を行ってきたため、新規の高速計算機の導入が遅れている。 その差額および旅費の残額が発生した。 高速計算機の導入および国際会議等への旅費として使用する。
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