研究課題/領域番号 |
24550261
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
永 直文 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (40314538)
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キーワード | ゲル / 高分子合成 |
研究概要 |
当研究室では、架橋点となる多官能性分子の「ジョイント分子」と架橋点間を繋ぐ2官能性分子の「ロッド分子」の付加反応を有機溶媒中で行うことにより、均質な網目構造を有するジョイント-ロッド型ゲルの合成とその網目構造の制御を検討してきた。これまでの検討では、付加反応には主に遷移金属触媒による反応を用いてきたが、本研究では、同ゲルの合成法の汎用性を広げるために、クリック反応の中でもより簡便な付加反応である、チオール-エン反応を用いたジョイント-ロッドゲルの合成を検討している。チオール-エン反応は、ラジカルで反応が進行するため、触媒を用いる必要がなく、少量のラジカル開始剤の存在下で、加熱あるいは紫外線の照射により反応が進行するため、種々の溶媒を用いたジョイント-ロッド型ゲルの合成が可能になった。また、親水性の高い溶媒を用いて合成したゲルについては、水に含浸するだけで溶媒の置換が起こり、ヒドロゲルへの変換が容易であることも明らかにした。溶媒には、イオン液体を用いることも可能であり、生成したゲルの電気化学的特性を詳細に検討し、網目を形成するジョイント分子、ロッド分子の分子構造、および、ゲル中の網目構造の割合がイオン導電性に及ぼす影響について明らかにした。また、酸化還元特性を示す低分子化合物のフェロセンを分散したゲルについても合成が可能であり、生成したゲルはフェロセンに由来する性質を示すことがわかった。さらには、剛直な構造のロッド分子を用いたゲルについては、溶媒を留去することにより多孔質構造のキセロゲルへの変換が可能であり、ジョイント分子、およびロッド分子に由来する光学的性質を示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、研究計画の中の「低分子化合物を内包したジョイント-ロッド型ゲルの合成」および「相互侵入網目ジョイント-ロッド型ゲルの合成」を中心に検討した。具体的には、フェロセンを含有するゲルを合成し、サイクリックボルタモグラムの測定により網目構造、ゲル中の網目含有量と酸化還元特性の相関について詳細なデータを得た。また、イオン液体を溶媒に用いたゲルを合成し、イオン導電率の温度依存性についても調査した。相互侵入網目ジョイント-ロッド型ゲルについては、分子量の異なるポリエチレングリコールの存在化でジョイント分子とロッド分子の付加反応を行うことにより合成した。得られた相互網目侵入ゲルについて、力学的特性解析を行い、ポリエチレングリコールを共存させたことによる機械強度の向上を確認した。計画では、光異性化する分子を内包したゲルについても検討する予定であったが、これについては現在進行中であり、次年度中には結果をまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画のとおり、平成26年度はこれまで合成したジョイント-ロッド型ゲルのデバイス化について検討する。特に、低分子蛍光物質を内包したゲルの電気化学発光を評価し、網目構造内での蛍光物質の発光挙動を調べるとともに、フレキシブル発光デバイスへの応用の可能性についても検討する。また、内包する低分子化合物として、凝集により発光する化合物や、比較的安定なラジカル分子を用いたジョイント-ロッド型ゲルの合成と特性評価についても検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究人員について、申請当初は大学院生2名の参加を予定していたが、平成25年度は当研究室の大学院生が0名となったため、物品費、旅費の費用が計画よりも少額になったため。 平成26年度は、当該研究への大学院生の参加が確定しており、物品費については計画どおりになる予定である。また、検討の範囲を一部拡大するため、その分の物品費の支出は増えることが予想される。旅費については、当該研究の補助事業期間の最終年度でもあることから、より積極的に行いたいと考えている。
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