研究課題/領域番号 |
24550262
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
須藤 篤 近畿大学, 理工学部, 准教授 (20293053)
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キーワード | 単糖類 / イノシトール / ポリスピロアセタール / 剛直高分子 |
研究概要 |
本研究の目的は、単糖類を原料として用い、剛直でありながら、必要に応じて容易にモノマーへと分解可能な高分子を開発することである。具体的には、(1)糖のジオール部位とケトンの反応による環状アセタールの合成を最適化し、 (2)糖とジケトンの重縮合によ って縮環系(糖由来の環+重合によって生成する環状アセタール)を主鎖にもつ高分子を合成し、(3)その剛直さが強度や耐熱性に与える影響をしらべ、(4)環状アセタール部位の酸加水分解によってモノマーへと戻すこと、の4つを達成することを目指している。 昨年度の研究では、当初の計画のとおり、サブテーマ(1)およびサブテーマ(2)の一部を達成することができた。今年度の研究計画はサブテーマ(2)の継続・充実とサブテーマ(3)の達成を目指した。その結果、それらを達成することができた。以下、その概要を記述する。 サブテーマ(2)では、単糖の一種であるmyo-イノシトールを出発原料に、その6つの水酸基の位置選択的な化学修飾により、数種類のテトラオール型モノマーを合成し、そのジケトンとの重縮合によって剛直なスピロ環状アセタール骨格をもつ高分子を合成することができた。これらの構造や分子量についてはマトリックス支援レーザー脱離イオン化法を用いた飛行時間型質量分析によって詳細な情報を得た。また、昨年度研究では分子量1000程度のオリゴマーが得られていたが、重合条件の最適化により分子量2000~6000程度まで伸長させることに成功した。 サブテーマ(3)では、得られたスピロ環状ポリアセタールの熱重量分析および示差走査熱量分析をおこなうことでその耐熱性を評価した。その結果、熱分解による5%重量減少温度はおよそ300度、ガラス転位点は150度と高い耐熱性を示し、剛直な主鎖構造がこれら耐熱性に寄与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖のアセタール化を用いた剛直なスピロ環状かつ縮環系骨格をもつ高分子の合成、という研究目的に対して、(1)単糖、特にイノシトールを原料として種々のテトラオール型モノマーを合成し、(2)それらとジケトンの重縮合によって複数のポリスピロアセタールの合成に成功、(3)それらが高い耐熱性をもつことを明らかにした。 この研究の進捗は当初研究計画通りであり、また今年度達成目標として設定した「剛直なスピロ環状骨格かつ縮環系骨格をもつ高分子を複数合成し、それらの耐熱性を明らかにする」を達成できていることから、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
24年度および25年度研究において、単糖の一種であるイノシトールを原料とすることで剛直なスピロ骨格をもつ高分子(ポリスピロアセタール)を合成し、その高い耐熱性を明らかにすることが出来た(サブテーマ(1)-(3))。 本年度研究では、当初の研究計画どおり、得られたポリスピロアセタールの酸性条件下における加水分解挙動を検討する(サブテーマ(4))。条件の最適化により、元のモノマーへの速やかな加水分解を目指し、ポリスピロアセタールの易分解性高分子としての応用、たとえばレジスト材料としての応用を可能にする基盤的な知見を得る。
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