研究課題/領域番号 |
24550263
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
長谷川 伸 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (60354940)
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研究分担者 |
前川 康成 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, グループリーダー (30354939)
澤田 真一 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究員 (70414571)
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キーワード | 放射線グラフト重合 / リビンググラフト重合 |
研究概要 |
高温で高い機械的強度と耐薬品性に優れたポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を基材として、スチレンスルホン酸エチルエステル(ETSS)のリビンググラフト重合による電解質膜の合成方法を検討した。まず基材にリビンググラフト重合の開始剤となるクロロメチルスチレン(CMS)を放射線グラフト重合を用いて導入した。反応溶媒がジオキサンの場合、グラフト率2%にもかかわらず、膜厚方向に均一に塩素原子が分布することをSEM-EDSにて確認した。このCMSグラフト-PEEKの重合膜を用いて、ETSSの原子移動ラジカル重合(ATRP)を検討した。触媒として臭化銅(CuBr)-Tris(2-pyridylmethyl) amine(TPMA)錯体を用いた場合、反応温度50℃において、アセトニトリル中でPEEKへのETSSのATRP反応が進行することを見出した。燃料電池用の電解質膜として用いる場合、その機械特性と導電率のバランスから、イオン交換容量を2.5~3.5 mmol/g(GD=100~200%)に制御する必要がある。そこで、CuBrとTPMAの濃度をそれぞれ0.0032:0.0064 Mに制御することによって、グラフト率を20~190%に制御できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画において、25年度以降は、『固相ATRP 法により、「イオン伝導性モノマーと疎水性モノマーからなるブロックグラフト鎖からなる電解質膜を調製」し、高温低加湿下(100℃,30%RH)での燃料電池を評価し、本研究を総括する。』とした。これまで、見出すことのできなかった、化学的に安定な芳香族炭化水素高分子膜であるPEEK膜への50℃の低温におけるATRP反応条件を新たに見出した。
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今後の研究の推進方策 |
高分子基材膜の開始剤を利用したATRP により導入した種々のグラフト電解質膜について、燃料電池試験を行い、電解質膜の性能を評価する。また、ATRP により導入した種々のグラフト鎖について、反応条件を変えてグラフト鎖を作製後、単離・精製したグラフト鎖の化学構造をNMR で、分子量、分子量分布をGPC で分析することで、高分子固相内でのグラフト重合のリビング重合性及び固相リビンググラフト重合機構の特異性の解明を図る。これまでの結果を元に全体を総括する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の多少の遅延により、執行計画にある設備備品であるGPCカラムの購入や、消耗品の購入に遅延が生じているため。 現在の研究計画を鑑み、実験計画に則ったグラフト鎖の単離とリビンググラフト重合反応の解析のためのGPCカラムの購入し、グラフト鎖の分子量分布の解析を行う。
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