研究課題/領域番号 |
24560002
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高倉 洋礼 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30284483)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 準結晶 |
研究概要 |
構造複雑系物質のひとつの典型である長周期Al基正10角形準結晶と近似結晶の純良単結晶育成を基本として、それらの原子構造を電子密度分布レベルで解明し、非周期長距離秩序形成のメカニズムと構造安定性の起源についての知見を得ることを目的に研究を行った。 具体的には、第一に、過去に約1.6nm周期をもつ正10角形準結晶の形成が報告されているAl-Cu-Rh系においてセルフフラックス法による単結晶育成を試みた。0.4nm周期をもつ正10角形準結晶と関連近似結晶の数ミリメートル大の単結晶の育成に成功したが、1.6nm周期のものは現時点では得られていない。しかし、Al-Ni-Ru系、Al-Cr-Cu系に引き続き、セルフフラックス法による単結晶育成が有効であることが確認されたことは重要である。第二に、1.2nm周期のAl-Cr-Cu系正10角形準結晶の3/2-2/1斜方晶近似結晶の単結晶X線構造解析をおこない、空間群がAmm2で6層構造からなる複雑な結晶構造を明らかにした。a軸投影構造において、遷移金属原子Cr/Cuの配置が一辺0.66nmの6角形と星型からなるタイリングの頂点と辺上の2つの位置を主に占めることを明らかにした。直径0.48nmの5角形柱状原子クラスターからなるこの結晶構造から得られる知見はAl-Cr-Cu系正10角形準結晶の高次元構造解析のためのモデル構築において重要役割を果たすと考えられる。第三に、準結晶の高精度な回折強度データ収集法の検討を進めるために、X線多重回折の実験とシミュレーションプログラムの開発をおこなった。実験はAl-Cu-Ru正20面体準結晶を試料として行った。X線の運動学的回折理論に基づくシュミレーションプログラムの基本型は完成した。実験で観測された多重回折パターンを正しく再現でき、同理論に基づく準結晶多重回折のシュミレーションが有効であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構造複雑系物質のひとつの典型である長周期Al基正10角形準結晶と近似結晶の純良単結晶育成を基本として、それらの原子構造を電子密度分布レベルで解明し、非周期長距離秩序形成のメカニズムと構造安定性の起源についての知見を得ることを目的して研究を進めてきた。そのために、準結晶の単結晶試料の作成、構造評価、単結晶構造解析を同時平行的に進めてきたが、研究実績の概要に記したように、新しくAl-Cu-Rh系での単結晶育成に成功し、Al-Cr-Cu系3/2-2/1斜方晶近似結晶の構造解析、準結晶のX線多重回折の実験とシミュレーションプログラムの基本型の完成という点で、それぞれおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
基本方針は平成24年度と同様である。Al-Ni-Ru正10角形準結晶の育成と構造評価を基準に、他の長周期Al基正10角形準結晶と近似結晶の純良単結晶育成を進める。単準結晶の育成はフラックス法を基本としつつ、他の手法による方法も検討する。純良単結晶が得られたものから、X線単結晶構造解析を順次進めてゆく。平成24年度に準結晶のX線多重回折を評価するためのシミュレーションプログラムの基本型が完成したので、そのプログラムをフェイゾンを考慮したシミュレーションもできるように改良する。さらに、多重回折実験を実施し、単準結晶を対称性、フェイゾンの有無、回折ピークの半値幅および散漫散乱の観点から構造評価行い、準結晶の高精度な構造因子データーを実験的に得るための方法の検討を進める。そして、構造未知な準結晶のクラスターモデルによる高次元構造解析と高次元電子密度解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度未使用額の発生理由は、消耗品の伝票が年度を跨いだことと、年度末は忙しく、購入のための手続きをする時間的余裕がなくて、年度末での消耗品の購入を見送ったためである。未使用額は平成25年度に消耗品費または成果発表の旅費として使用する予定である。
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