研究課題/領域番号 |
24560003
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
山口 留美子 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30170799)
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キーワード | ネマチック液晶 / 配向膜 / ラビング処理 / 容易軸 / アンカリング力 |
研究概要 |
本研究は、配向膜からの一方的な液晶配向制御という従来の手法とは異なり,液晶分子が配向膜に及ぼす影響を積極的に取り入れた液晶配向制御を目的としている。「液晶分子の配向方向が,液晶材料の化学構造により異なる」というこれまでに報告例がほとんど無い配向現象の検証例を増やすとともに,配向方向の異なる液晶を混合することで,アンカリング力を制御する技術をめざすものである。 液晶分子骨格基,末端基,極性基の種類,およびそれら組み合わせが異なるおよそ20種類の単体ネマチック液晶において、高分子として側鎖に環構造を有する材料に着目し、種々の高分子材料薄膜のラビング表面における液晶配向方向を調べた。 その結果、ポリビニルシンナメートのように、液晶材料により容易軸が異なる高分子材料として、ポリ4ビニルピリジン、ポリビニルイミダゾル、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、を見出した。さらに、液晶が高分子膜の遅相軸に配向するとされていた従来の配向メカニズムに反し、調査したすべての液晶が遅相軸に垂直に配向するいくつかの高分子材料の存在も明らかにした。 ポリ4ビニルピリジンおよびポリビニルイミダゾルとPVCiのラビング膜を比較した結果、極性基を有する液晶はラビング方向と垂直に配向することは一致していたが、ポリ4ビニルピリジンとポリビニルイミダゾルでは極性基を持たない一部のニュートラル液晶においてもラビング方向と垂直に配向することが明らかとなった。加えて、ラビング方向に対して垂直に配向する液晶と平行に配向する液晶を混合し,配向方向が切り替わる濃度を検証した。液晶混合によるアンカリング力の変化は、PVCiおよびポリ4ビニルピリジンでは1~2桁程度変化するが、ポリビニルイミダゾルでは、垂直配向時は10^-5N/m桁、平行配向時は10^-6N/m桁であまり変化しないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)配向膜の種類を増やし,容易軸の液晶材料依存性を比較検討する。 液晶材料により容易軸異なる高分子材料として、新たにポリ4ビニルピリジン、ポリビニルイミダゾル、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、を見出した。PVCi膜では液晶分子の極性基の有無が配向方向を決定する要因であったが、極性基を有する液晶はラビング方向と垂直に配向することは一致していた。しかし、どのような液晶がラビング方向と平行に配向するのかは、高分子によってそれぞれ異なった。調査したすべての液晶が遅相軸に垂直に配向する高分子材料として、ポリベンジルメタクリレート、ポリフェニルメタクリレート、ポリエチルオキサゾリン、ポリビニルカルバゾールが確認された。以上、配向メカニズムを議論するための配向現象事例が新たに加わった。 (2)液晶材料の混合による配向方向変化とアンカリング力変化の測定。 異なる化学構造の液晶混合により,配向秩序度の低下,2つの配向メカニズムの競合,が生じると考えている。結果は、、PVCiおよびポリ4ビニルピリジンでは1~2桁程度変化を確認するにいたった。しかし、ポリビニルイミダゾルでは、垂直配向時は10^-5N/m桁、平行配向時は10^-6N/m桁であまり変化しないことが明らかとなった。配向方向が変化する混合濃度もそれぞれ高分子材料によって異なる。混合液晶では、それぞれの液晶が配向膜界面に吸着する濃度が異なるのではないかという可能性に関し、温度変化によって配向方向の変化がないことを確認し、界面とバルクでの液晶濃度の違いによる影響は無いものと考えている。 以上、今年度の計画に挙げた2つの研究内容のいずれにおいても,良好な進展状況である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)混合液晶による配向特性の変化:これまで配向方向とアンカリング力に着目をして配向特性を測定してきたが、配向状態の一様性、すなわち配向オーダーの評価も取り入れる。またラビング強度依存性がある可能性も確認されたため、定量的なラビング強度による配向処理を検討した上での実験が必要とされる。加えて、混合する液晶の系を増やし、上記の実験を行う。 (2)弱アンカリング力界面を活用した液晶デバイスの作製:アンカリング強度と電気光学特性との関係を明らかにし、双安定向効果やメモリ効果の発現の検証を行う。 (3)研究の取りまとめ:得られた結果から“液晶分子と配向膜の協力現象”としての配向メカニズムの考察を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定であった液晶材料が、金額が不足したため購入できなかった。その段階では入手しできなくても実験に支障が無かったため、次年度の購入時に加えて使用したほうがよいと判断した。 液晶材料の購入の一部に当てることとする。
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