研究課題/領域番号 |
24560005
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
神島 謙二 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20321747)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 結晶工学 / 応用物性 |
研究概要 |
β-アルミナのカリウム層のイオンを置換することにより、強磁性六方晶M型フェライト試料の作製を試みた。まずは、カリウムとイオン半径の近いランタンで置換した試料を、通常の酸化物セラミック作製法で1200~1300℃の焼成温度で作製した。粉末X線回折実験を行ったところ、六方晶M型フェライト、β-アルミナ、ヘマタイトの混相であることが判明した。この試料は室温でも強磁性を示し、印加磁場70 kOeにおいて飽和磁化値23.1 emu/gを示した。六方晶M型フェライト相が磁化を生じさせていると考えられることから、一般的な六方晶M型フェライトであるBaFe12O19と同程度の磁化値(MS=73 emu/g)をこの六方晶M型フェライト相は有していると考えられる。磁化-温度測定では1つのキュリー点が観測され、その温度は440℃であった。これは一般的な六方晶M型フェライトのキュリー点に非常に近い(BaFe12O19のキュリー温度450℃)。したがって、カリウムを用いて強磁性六方晶M型フェライトを作製するという目的を達成しつつある。 また、その周辺物質の探索も行い、複雑な結晶構造を有する六方晶U型フェライトならびにマグネタイト-チタン酸バリウム複合材料の作製にも成功した。前者は報告例のないものであり、後者は室温で磁化過程に直結した磁気抵抗効果を示した。 このような新物質探索は、新材料開発研究の礎石となるものであり、重要なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
通常の酸化物セラミック作製法で、β-アルミナのカリウム層のイオンを置換することにより、強磁性六方晶M型フェライト試料の作製を試みた。イオン半径の近いランタンで置換したところ、強磁性が発現した。キュリー温度は約440℃であり、一般的なM型バリウムフェライトと同程度であった。X線回折実験を行ったところ、六方晶M型フェライト、β-アルミナ、ヘマタイトの混相であることが判明した。このように、カリウムを用いて強磁性六方晶M型フェライトを作製するという目的を達成しつつある。 これを如何に単相に近づけるか、構成元素を更によりありふれた、より人体に優しいものに出来るかが次の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で探索したカリウム層のイオン置換の実験で探索した作製条件を出発点とし、更にイオン置換の可能性を探る。ゴム・プラスチック以外のすべての試料を粉砕できる遊星型ボールミルを利用し、原料試薬粉末をナノサイズまで粉砕する。その上で固相反応させることにより、良質な強磁性六方晶M型フェライト試料の作製を試みる。初年度と同様に、作製した試料について、X線回折実験ならびに磁気測定を行うことにより、強磁性試料生成の最適条件の探索を行う。また、理化学研究所(埼玉県和光市)に出張し、EPMA分析で組成を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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