研究課題/領域番号 |
24560008
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
加藤 有行 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (10303190)
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研究分担者 |
菊池 崇志 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30375521)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プラズマ / 光物性 / ナノ材料 |
研究概要 |
平成24年度は,還元・硫化・窒化処理のうち還元処理を,低圧誘導結合性プラズマ(ICP)を用いてKSrPO4:Euに対して行った.KSrPO4:Euはリン酸塩を母体に持つため温度安定性に優れた特長をもち,照明用として期待されている蛍光体である.還元に用いるKSrPO4:Eu(0.4%)前駆体は以下に示す均一な組成の微粒子が高い収率で得られる錯体重合法により作成した.化学量論比に秤量したリン酸二水素カリウム(KH2PO4),炭酸ストロンチウム(SrCO3),酸化ユーロピウム(Eu2O3)を,希硝酸水溶液に溶解し,金属イオンの二倍のモル比のクエン酸一水和物を加え,80℃で2時間撹拌することにより,金属イオンをキレート化させた.クエン酸一水和物と同モル量のプロピレングリコールを加え,100℃で重合反応を起こさせることにより,エステル樹脂を得た.得られた樹脂を350℃で熱分解させ,さらに大気中800℃で3時間仮焼することで,KSrPO4:Eu前駆体を得た.低圧ICPは300W,13.56MHzの高周波を用いて,窒素ガス流量20sccm,圧力0.7~0.9Torrの条件化で発生させた.ICP中に前駆体を10分間置いたところ,Euの3価によるf-f遷移の発光のピーク強度は約1/12に減少し,Euの2価によるf-d遷移の発光(前駆体では観測されない)がその減少した3価発光の約740倍のピーク強度で観測された.従来,この前駆体の還元処理には,1200℃3時間の水素雰囲気が必要であったことから,本研究でのわずか10分でのICPによる処理はきわめて効果的であるということがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年計画における還元・硫化・窒化処理のうち還元処理が初年度に達成できたので,おおむね順調であるといえる.現段階では窒素ガスのみを用いているが,還元性ガスである水素を導入することでさらに還元効率を高めて生きたい.しかし,使用したプラズマが研究課題名にもある大気圧プラズマでなく低圧ICPであるため,今後は還元処理以外の処理の試みとともに大気圧プラズマを生成する環境作りを進めていきたい.また,処理に用いた蛍光体粒子は簡便な錯体重合法により生成したものであったが,研究課題名にもあるようにナノ粒子に対しても処理をしていきたい.
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今後の研究の推進方策 |
プラズマ発生については上述のように低圧であるということと,現在のところインピーダンスマッチングを主導で行っているためにプラズマが不安定であるという問題点がある.そこで,自動マッチングボックスを導入することによりプラズマをより高い圧力下で安定して発生できるようにしていきたい.蛍光体の処理のうち,還元処理については水素ガスを導入することにより,さらなる還元効率の向上を目指したい.その他の硫化・窒化処理については反応性ガスを導入する必要があるが,その準備として反応性ガスの排気処理のための除害槽およびガス警報器の整備から着手していく予定である.蛍光体粒子合成については,これまでの錯体重合法に合わせて,ソルボサーマル法またはポリオール法といった名の粒子合成法も導入し,比表面積を高めることにより処理効率の向上を目指したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
まず,より高い圧力で安定してプラズマを生成するため,現有の高周波電源(パール工業,RP-1500R,13.56MHz,1500W)用の自動マッチングボックスを導入する.また,反応性ガス導入用のマスフローコントローラー(HORIBA STEC,SEC-N100シリーズ)を,排気ガス処理用にコンパクトドラフト(アズワン,CD7P-F)およびスクラバー(アズワン,SB-5N)を導入する.また,反応性ガスのガス漏れ検知用に毒性ガス検知警報器(光明理化学工業,TA-480+TH-D4A)を導入する.
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