研究課題/領域番号 |
24560008
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
加藤 有行 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (10303190)
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研究分担者 |
菊池 崇志 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30375521)
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キーワード | 誘導結合型プラズマ / 蛍光体 / 還元処理 / 硫化処理 / 窒化処理 |
研究概要 |
平成24年度に引き続き,還元・硫化・窒化処理のうち還元処理を,低圧誘導結合性プラズマ(ICP)を用いて主にKSrPO4:Euに対して行った.KSrPO4:Euはリン酸塩を母体に持つため温度安定性に優れた特長をもち,照明用として期待されている蛍光体である.還元に用いるKSrPO4:Eu(0.4%)前駆体は平成24年度と同様に均一な組成の微粒子が高い収率で得られる錯体重合法により作成した.今年度は,13.56 MHzのICP照射において種々の条件を変え,還元処理に最適な条件の探索を行った.ガス種について,平成24年度に用いた窒素ガスに対し,3%の水素ガスを混合したところ,還元された2価のEuのf-d遷移による青色発光の強度が約10倍に増大した.入力電力に対しては,20~150 Wの範囲で変化させたところ,80 WでEu2価発光の最大強度が得られた.ガス流量および照射時間に対してはそれぞれ10~50 sccmと10~30分の範囲で変化させたが,顕著な変化は見られなかった.現段階で還元に対して最も効果的な照射条件は,入力電力80 W,照射時間 15分,ガス流量 40 sccm,ガス種N2/H2(3%)である.Eu2価発光の強度は,従来の水素雰囲気下(1200℃,3時間)における還元処理のものに比べ約40分の1とまだまだ還元が不十分であるが,投入電力量あたりのEu2価発光の強度増大について考えると,ICPによるもののほうが約1.5倍と高いことから,還元量の改善がなされれば,ICPによる還元処理はきわめて効果的な方法になりうることがわかった.また,KSrPO4:Eu以外に,ケイ酸塩蛍光体,Li2CaSiO4:Eu,Li2SrSiO4:Eu,Li2BaSiO4:Euに対しても還元が起こっていることを確認し,ICPによる還元処理は他の多くのEu添加酸化物蛍光体に対して適用範囲を広げられる可能性があることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年計画における還元・硫化・窒化処理のうちの還元処理のみに2年を費やしたが,還元性ガスである水素を導入まで成功しており,残りの硫化・窒化処理のための反応性ガスの導入の下準備はできているため,おおむね順調であるといえる.しかし,還元処理についても,成功こそしているものの従来の水素雰囲気下における還元処理のものに比べ約40分の1とまだまだ不十分であることから,改善にむけて引き続き研究を進める必要がある.また,昨年度の報告書において,使用したプラズマが研究課題名にもある大気圧プラズマでなく低圧ICPであるため,大気圧プラズマを生成する環境作りを進めることと,処理に用いた蛍光体粒子は簡便な錯体重合法により生成したものであったが,研究課題名にもあるようにナノ粒子に対しても処理をしていくことを課題として挙げていたが,未達成であるので,最終年度において進めて行く必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
現在,還元性ガスである水素を導入には,あらかじめ一定量の濃度で混合された窒素ガスボンベから直接行っているが,より高効率な還元条件を探索するには,混合させる水素濃度の変化も必要である.そこで,マスフローコントローラーを導入し,還元効果と水素濃度の定量的な関係を明らかにする.また,現在まではEuの2価発光強度の増大の観測という結果のみの確認であったが,還元にどのプラズマ活性種が寄与しているのかを含めそのプロセス解明をするためにプラズマの分光による評価も行う.硫化・窒化処理については排気処理のための除害槽およびガス警報器の整備を行ったうえで,反応性ガスの導入を試みる.蛍光体粒子合成については,これまでの錯体重合法に合わせて,マイクロエマルジョンを用いたポリオール法によるナノ粒子合成法を導入し,比表面積を高めることにより処理効率の向上を目指したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
反応性ガス濃度の制御用マスフローコントローラーの導入が遅れたため. 還元性ガスおよび反応性ガス濃度の制御用にマスフローコントローラー(HORIBA STEC,SEC-N100シリーズ)を,排気ガス処理用にコンパクトドラフト(アズワン,CD7P-F)およびスクラバー(アズワン,SB-5N)を導入する.また,反応性ガスのガス漏れ検知用に毒性ガス検知警報器(光明理化学工業,TA-480+TH-D4A)を導入する.また,ナノ粒子合成のために高圧マイクロリアクター(オーエムラボテック,MMJ-200)を導入する.
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