研究課題/領域番号 |
24560009
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
秋本 晃一 日本女子大学, 理学部, 教授 (40262852)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 化合物半導体 / X線回折 / 結晶工学 / GaN / メゾスコピック |
研究概要 |
代表的なワイドギャップ半導体であるGaNは光デバイスばかりでなく電子デバイスとしての期待も大きい。しかし、電子デバイスとして利用するためには結晶の品質のさらなる向上が必要になると考えられている。本研究では、X線トポグラフィーの手法により最近発見された、微小に傾いたμmオーダーのメゾスコピックなスケールの結晶グレインの解明および制御がGaN結晶のさらなる結晶性の向上の鍵をにぎると考え、その詳細を明らかにすることを目的とする。また、加工の難しいGaN結晶の研磨について表面近傍のひずみ測定を極端に非対称なX線回折法により行い研磨技術の確立に資する。 本年度は、高エネルギー加速器研究機構の放射光研究施設のシンクロトロン放射光を利用し、X線トポグラフの撮影にCCDカメラを用い、トポグラフ像を詳細に解析を行うことにより、アモノサーマル法で作製された欠陥密度の少なく非極性面であるm面のGaN結晶についてμmオーダーでの結晶面の傾きのずれ(⊿θ)と結晶の面間隔の伸縮(⊿d)を分離することに成功した。さらに、解析結果から結晶欠陥について考察した。 また、X線をすれすれに入射する条件でのバルク結晶からの回折線を用いた表面に敏感なX線回折法によりHVPE法で作製されたGaN結晶について表面近傍の微小な格子ひずみの測定を行った。また、六方晶系の物質における計算としてはじめて定量的なひずみ評価に成功した。その結果、成長方法を変えることにより、ひずみの大きさとその深さが変わることが明らかになり、試料全体の「そり」との関係が議論された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
X線をすれすれに入射する条件でのバルク結晶からの回折線を用いた表面に敏感なX線回折法において、定量的なひずみ評価にはDarwinの動力学的回折理論が必要である。本研究では現在までに、六方晶系の物質における計算としてはじめて定量的なひずみ評価に成功した。今後この計算方法を用いて、さまざまなGaN結晶成長条件におけるひずみの定量的評価が可能になった。計算方法が確立できたことから、この極端に非対称なX線回折法と呼ばれる研究手法において、実験と計算の両面によるひずみ解析から非破壊・広範囲での総合的な結晶評価法が確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度までに得られたに得られたDarwinの動力学的回折理論を用いた定量的なひずみ評価法を結果をもとにして、GaN結晶の表面近傍のひずみに関する研究を行う。GaN結晶の表面近傍のひずみはその後の結晶成長に大きな影響を与え、デバイス特性にも影響を与える可能性がある。本研究では、さまざまな結晶成長の条件について表面近傍のひずみの研究を進めるとともに、応力やひずみによる構造変化に関し、結晶成長初期過程についても研究可能な手法である電子線を用いた研究も行う。 また。X線トポグラフの解析において、μmオーダーでの結晶面の傾きのずれ(⊿θ)と結晶の面間隔の伸縮(⊿d)を分離を行っているが、解析に時間がかかるのが問題になっている。今後、画像処理ソフトを効果的に用いることにより解析位置をCCDのピクセル単位で特定することを迅速に行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
表面近傍のひずみの研究を、その後の結晶のそり等に大きな影響を与えると考えられる結晶成長初期過程について電子線を用いて研究を遂行するために超高真空装置及び電子回折装置を整備する。また、GaN試料の清浄化のための試料まわりについて装置の試作を行う。このような超高真空中で用いる装置開発には当初予定していた研究費より多額の研究費が必要であると見積もられ、これが次年度に使用する研究費が生じた理由である。なお、電子線を用いた研究の必要性はひずみについての研究が進展するにつれ次第に明らかになってきたものである。 また、X線トポグラフの解析において、μmオーダーでの結晶面の傾きのずれ(⊿θ)と結晶の面間隔の伸縮(⊿d)を分離を行う際、解析位置をCCDのピクセル単位で特定することを迅速に行うための画像処理ソフトおよび解析用コンピュータを整備する。
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