代表的なワイドギャップ半導体であるGaNは光デバイスばかりでなく電子デバイスとしての期待も大きい。しかし、電子デバイスとして利用するためには結晶の品質のさらなる向上が必要になると考えられている。本研究では、X線トポグラフィーの手法により最近発見された、微小に傾いたμmオーダーのメゾスコピックなスケールの結晶グレインの解明および制御がGaN結晶のさらなる結晶性の向上の鍵をにぎると考え、その詳細を明らかにすることを目的とする。また、加工の難しいGaN結晶の研磨について表面近傍のひずみ測定を極端に非対称なX線回折法により行い研磨技術の確立に資する。 高エネルギー加速器研究機構の放射光研究施設のシンクロトロン放射光を利用し、X線トポグラフの撮影にCCDカメラを用い、トポグラフ像を詳細に解析することにより、アモノサーマル法で作製された欠陥密度の少なく非極性面であるm面及びc面のGaN結晶についてμmオーダーでの結晶面の傾きのずれ(⊿θ)と結晶の面間隔の伸縮(⊿d)を分離し画像として可視化した。 本年度は、アモノサーマル法で作製された基板上にHVPE法でGaN薄膜を成長させた試料の断面について、結晶面の傾きと面間隔のずれを分離し画像化して可視化した。その結果、結晶面の傾きの変化している領域は広いのに対し、面間隔のずれは線状にあらわれることがわかった。このことは線状の欠陥が入っていることを示唆している。さらにそれらの欠陥は成長界面の直上からあらわれるわけではなく、界面からある程度離れた位置から発生すること及び場合によってはさらに成長したときに消滅するように観察されるものも存在することがわかった。また、本年度は新たに超高真空装置を立ち上げ、結晶性の良好なHVPE法で成長されたGaN結晶の表面構造を超高真空中で加熱しながら、反射高速電子回折装置で観察し、構造変化について考察した。
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