研究課題
本研究の目的は、半導体結晶中での励起子と光子の結合状態である励起子-ポラリトン状態に着目し、励起子-ポラリトン状態における下枝ポラリトンの光子性の強い部分(Photon-like Polariton)を経由した発光バンド(励起子-励起子散乱発光など)の発光減衰時間の意味を考えるものである。励起子-励起子散乱発光においては、n=1準位にある2つの励起子が弾性衝突することによって、1つの励起子をn=2以上の高次の励起子準位へと励起させ、もう一つの励起子をn=1の励起子準位から弾性散乱によって失われたエネルギー差だけ低いPhoton-like Polaritonへと散乱された後に発光が生じる。Photon-like Polaritonを経由した発光バンドの発光寿命は、その光子性の強さから非常に早い減衰時間を示すと考えられるが、その関係性はこれまでに明らかになっていない。そこで本研究では、光カーゲート分光法を用いて、励起子-励起子散乱発光の時間分解発光スペクトルを測定し、(1)発光に関与するポラリトンの光子性の特徴が発光減衰時間にあたえる影響の解明すること、(2)励起子-励起子散乱発光を用いた光デバイスへの知見を得ることを目指した。その結果、ワイドギャップ半導体であるZnO薄膜において、励起子-励起子散乱発光の発光減衰時間が膜厚を薄くすることによって、顕著に短くなることを時間分解発光スペクトルの測定から明らかとした。その発光減衰時間の発光波長依存性について解析を行うと、それらは、ポラリトンの群速度に関係するような振る舞いを示すが、群速度から推定される発光減衰時間の値とは2桁程度大きな違いがある。これについては、励起子と光の結合強度が膜厚によって変化するという理論的な考察から、膜厚が薄くなることで励起子と光の結合強度が増大し、光子性が強まり、発光減衰時間が短くなるという結論を得た。
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Journal of Luminescence
巻: 152 ページ: 250-253
10.1016/j.jlumin.2013.12.024