研究実績の概要 |
平成24年度は,有機薄膜太陽電池の動作状態での内部電場を測定するための新手法である白色光照射下電場変調吸収分光法(EAWL法)を開発した。平成25年度は,GZO/亜鉛フタロシアニン(ZnPc)/CuI/Auショットキー障壁型太陽電池のGZO/ZnPc界面に種々のバッファー層を挿入し,内部電場を増強させると共に変換効率を向上させることを試みた。膜厚はZnPcが150nm,バッファー層が5nmである。バッファー層にNTCDAを用いると変換効率が0.012%にまで向上することを見出した(バッファー層なしでは0.004%)。 最終年度の平成26年度は,バッファー層にアクセプター材料(C60及び3種類のペリレン誘導体 PTCDA, Me-PTC, PTCBI)を用いて研究を行った。アクセプターを挿入すると,本質的にはショットキー障壁型ではなくヘテロ接合型となるが,アクセプター層の膜厚が5nmと極めて薄いため,擬ショットキー障壁型と捉えることができる。当然予想されたように,アクセプター層の挿入により変換効率は飛躍的に向上した。PTCBIを用いた場合が効率は最も高く,0.19%であった。光電流アクションスペクトルを測定したところ,PTCBI層を挿入した場合,PTCBI膜厚がわずか5nmであるにもかかわらず,分光感度は膜厚150nmのZnPcよりPTCBIの方が大きいことがわかった。次にEAWL法で素子の内部電場を測定したが,内部電場と変換効率との間に明確な相関は見られなかった。X線回折法によりZnPcの分子配向を調べたところ,PTCDA層を挿入した場合のみZnPcの電流容易軸が基板に対して立つ配向をしていた。このような配向はキャリヤ輸送に有利である。しかし,PTCDAを挿入した時の変換効率は0.04%しかなかった。以上の結果は,2015年3月に開催された応用物理学会で発表した。
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