研究課題/領域番号 |
24560013
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森吉 千佳子 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00325143)
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研究分担者 |
森分 博紀 一般財団法人ファインセラミックスセンター, ナノ構造研究所, 主席研究員 (40450853)
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キーワード | ペロブスカイト型強誘電体 / 放射光回折実験 / 電子密度分布 / 第一原子計算 |
研究概要 |
ペロブスカイト型強誘電体の強誘電相における自発原子変位や格子歪みを議論するには,構造中のどの化学結合がそのような変位を引き起こしているかを明らかにする必要がある.今年度は,高エネルギー放射光回折実験により電子密度の空間分布を観測すること,さらに,第一原理計算により実験を再現する電子状態を検討することを目的として研究を行った. (1) 高エネルギー放射光粉末回折実験(濃度変化・室温):BiFeO3-xPbTiO3試料を用い,SPring-8の粉末回折ビームラインBL02B2にて放射光粉末回折実験を行った.試料にはPb原子やBi原子などの重原子が含まれるので,放射光の吸収効果が無視できる35 keVの高エネルギー放射光を用いた.粉末試料を内径0.2 mmのクォーツ製キャピラリーに封止し,イメージングプレート上に粉末回折パターンを測定した.温度制御された窒素ガスを試料に吹き付けることにより試料の温度を制御した.正方晶相-正方晶相同型相転移に伴う回折パターンの変化が観測された.リートベルト法に基づく結晶構造解析とマキシマムエントロピー法に基づく電子密度分布解析の結果,各相の正方晶歪みを特徴的づける化学結合の様子が観測された. (2) 第一原理計算による構造最適化:BiFeO3-xPbTiO3固溶体の化学結合を検討するため,この固溶体のエンドメンバーであるBiFeO3とPbTiO3についてエネルギー計算やバンド計算を行い,任意組成のときの原子間の軌道混成の様子を検討した.(1)の結晶構造解析や電子密度解析の結果と比較しながら立方晶相-正方晶相-正方晶相の相転移を支配する化学結合の検討を行った.Fe/Ti-O6八面体の歪みや正方晶歪みを支配するのはBiやPbの孤立電子対であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示した内容の達成度は,交付申請書に記載した内容の9割程度である.概ね順調に進展していると考えて良い.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までの研究進捗状況から当初の目的はおおむね達成された.現在,本研究のスタートとなったインドの研究グループとの情報交換を密に行い,論文執筆を行っているところである.
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