研究課題/領域番号 |
24560016
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
八方 直久 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (30285431)
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キーワード | スピントロニクス / 局所構造解析 / 原子分解能ホログラフィー |
研究概要 |
我々は、高速動作と低消費電力が期待されるスピントロニクス(電子の電荷とスピンの両方を利用した機能デバイス)材料の希薄磁性半導体Ge1-xMnxTeについて、その結晶構造を調べる研究を行っている。 2013年度は、Ge1-xMnxTeと同様にスピントロニクス材料であるCo添加Ti02薄膜結晶について、蛍光X線ホログラフィー実験を行い、その解析を進めた。(蛍光X線ホログラフィーは、光電子ホログラフィーと同様に、物質中の局所的な原子配列を3次元的に調べることができる実験手法である。)その結果、アナターゼ型Ti02においては、添加したCoがTiとの置換サイトに存在することが明らかになり、2014年1月の放射光学会において発表を行った。今後、更に解析を進めて、物理系の雑誌に投稿する予定である。 また、磁性トポロジカル絶縁体Mn添加Bi2Te3について、蛍光X線ホログラフィー実験を行い、MnやBi周辺の局所構造解析を行った。この結果については、国際会議 “Light and Particle Beams in Materials Science (LPBMS) 2013”にて発表し、議事録として掲載された。 また、リラクサー強誘電体Pb(Mg1/3Nb2/3)O3について、蛍光X線ホログラフィー実験を行い、Nb周辺の局所構造解析を行った。この結果については、Physical Review B (Rapid Communications)」誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強磁性半導体の局所的な原子配列を調べる試料準備のために、昨年度に引き続き分子線エピタキシー装置を用いて、Ge-Te 系の試料であるGe2Sb2Te5の作製を行い、今後のGe-Mn-Te系試料作製に目処をたてることができた。(試料準備に関する達成度:概ね85%) GeMnTeの光電子ホログラフィーによる研究は、試料準備が進まなかったために進展させることができなかったが、その代わりに関連材料である室温共時性半導体Co添加Ti02薄膜結晶、磁性トポロジカル絶縁体Mn添加Bi2Te3、リラクサー強誘電体Pb(Mg1/3Nb2/3)O3などについて、蛍光X線ホログラフィーによる局所構造解析を行った。それぞれ国内外の学会にて発表、論文投稿を行った。(測定・解析と成果発表に関する達成度:概ね80%)
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今後の研究の推進方策 |
2012-2013 年度に改造・再整備した分子線エピタキシー装置を使用して、Ge-Mn-Te 系試料作製を実施する。試料準備を完了させて、SPring-8 での光電子ホログラフィー実験を実施したい。 Ge-Mn-Te 系試料の母体である GeTe について、蛍光X線ホログラフィーの実験結果を論文にまとめて雑誌投稿を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度の施設使用料(SPring-8消耗品費)や、出張実験用旅費・宿泊費などが想定していたほど必要とならなかったことなどにより、次年度使用額が生じた。施設混雑による課題不採択が多く、例年より出張実験件数が少なくなったことが原因である。来年度の採択件数増加を見越して、繰り越すことにした。 次年度使用額は、2014年度の施設使用料や実験のための旅費・宿泊費などとして使用する予定である。課題申請書の見直しなどの対策を行った結果、採択率が向上し、2014年度上期は4件が採択された。これらのビームタイム遂行のために有効に使用する予定である。
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