研究課題/領域番号 |
24560022
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
赤澤 正道 北海道大学, 量子集積エレクトロニクス研究センター, 准教授 (30212400)
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キーワード | 窒化インジウムアルミニウム / 窒化物混晶 / 表面 / 界面 / フェルミ準位ピンニング / MIS構造 / 表面不活性化 / 界面制御 |
研究概要 |
InAlNと絶縁膜との界面におけるフェルミ準位ピンニングの制御について検討した。具体的には、InAlN表面に原子層堆積(ALD)により酸化アルミニウム膜を形成し、さらに金属電極を形成して、金属-絶縁体-半導体(MOS)構造とし、界面の電気的特性の界面形成プロセス依存性について検討した。 InAlNは熱的・化学的には比較的安定であるが、MOS構造作製の際、酸化アルミニウム膜の形成前に、熱処理によりInAlN表面に制御性の悪い酸化が進行した場合には、界面準位が増大し、表面フェルミ準位のピンニングが引き起こされることがわかった。特に、オーミックコンタクト電極作製時には、SiN絶縁膜を表面保護膜としたキャップアニールを行うことが重要であることがわかった。 また、熱処理により絶縁体-半導体界面の界面準位が低減を図ることが多いが、酸化アルミニウム膜は、800 ℃以上の高温において微結晶化し、それによる絶縁特性劣化が引き起こされる。しかし、X線光電子分光法(XPS)による詳細な検討により、酸化アルミニウム膜を2 nm程度の厚さの極薄層とした場合には、850℃の熱処理を行っても、界面における相互拡散や酸化の進行が起こらないことがわかった。これをもとに、本研究においては、まず極薄の酸化アルミニウム膜を形成し、850 ℃で熱処理し、その上にさらにALDにより酸化アルミニウム膜を形成する2段階ALDプロセスにより、絶縁体-半導体界面を形成することにより、良好な界面の特性が得られ、表面フェルミ準位のピンニングが除去されることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画した絶縁体-半導体界面の制御プロセスを実現できた。充分に良好な特性は得られているものの、完全にプロセスを最適化するところまでは達しなかったためやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究により積み上げた知見をもとに研究を進める。 平成26年度は金属-半導体界面の研究について計画していたが、研究期間中の調査・研究に基づいて、計画を変更する。 現在のところ、InAlNを通した漏れ電流が大きく、その原因は不明のままであり、ショットキーゲート構造の高電子移動度トランジスタ(HEMT)では、素子の特性制御に限界があることが課題となっている。最近の研究によって、MOSゲート構造の採用により漏れ電流を低減できることがわかり、同構造を利用したMOSHEMTにおいて高い遮断周波数が実現されている。すでに実験を行った結果、MOS構造において電極金属を変えても、むしろ、絶縁体-半導体界面の特性(界面準位や固定電荷)がより大きな影響を与えることがわかった。以上のように、絶縁体-半導体界面の制御方法の確立が求められる社会的背景となったので、計画を変更し、平成26年度も、絶縁体-半導体界面の制御を中心に研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
残額が小額であったので、次年度の予算と合わせて有効に使うために繰り越しとした。 研究に必要な物品の購入に当てる。
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