研究課題/領域番号 |
24560026
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
遠藤 民生 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任教授(継続雇用) (80115691)
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キーワード | マンガン系酸化物 / 酸化亜鉛 / 新規p-n接合 / 薄膜配向成長 / 面直面内配向 / ステップ・テラス成長 / I-V整流特性 / 温度・光照射効果 |
研究概要 |
イオンビームスパッタ法で各種基板上に六方晶系のZnO下層薄膜を堆積し、種々の堆積条件(基板温度や酸素分圧)で立方晶系のLSMO及びLBMO上層薄膜を成長した。これらの結晶性を面直・面内XRDで評価した。どれも高品質の結晶性が得られ、結晶配向性はバラエティーに富むが、堆積条件によって完全に制御でき、単相配向膜の成長に成功した。 LSMO/ZnOの面内配向を面内XRDを用いて詳細に調べた。 次にLBMO/ZnOヘテロ接合の作成を試みた。ZnO下層膜はMgOとサファイア基板上では面直(001)配向単相膜が成長し、LAOとSTO基板上では(110)主配向の(110)と(001)の混相膜が成長する。(001)単相及び(110)(001)混相ZnO下層膜上のLBMOは全て(110)単相膜が成長する。各基板上のZnOはステップ・テラス成長し、その上のLBMOも明瞭なステップ・テラス成長をした。STO基板上ではZnO(100 nm)もLBMO(60 nm)も最大のテラス幅を示した。 LBMO(p型)/ZnO(n型)ヘテロ接合は優れた整流(I-V)特性を示し、整流比はSTO基板で最大値(210)を示した。界面の平滑性が整流特性には重要な要素である。サファイア基板上のLBMO/ZnOの整流特性が温度によって大きく変調できることに成功した。整流比や接合抵抗の温度依存性は100 K辺りで極大を示し、基本的にLBMOの巨大磁気抵抗効果を反映したp-n接合が得られた。光を照射すると、接合特性の順方向電流は増大し、通常の振る舞いとは逆の奇妙な光照射効果を表した。LBMOの交換二重結合モデルに基づくものと思われる。LBMO/ZnOヘテロ接合は、ある程度大きな電流を流すとI-V特性が大きく変化することが明らかになった。巨大な抵抗スイッチやI-Vヒステリシスを表す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マンガン系酸化物(LSMO, LBMO)が有する大きな特徴である、巨大磁気抵抗効果を利用し、高品質薄膜成長が期待できるZnOと組み合わせることによって、新規ヘテロp-n接合を作成することが本研究の目的である。すなわち、温度・磁場・光照射で大きく変調できるp-n接合である。安定した制御性の良い接合特性を得るためには、結晶薄膜の配向成長を先ず制御できなければならないが、これは、基板温度、酸素分圧、酸素分子かプラズマ供給の堆積条件によって解決できた。次に均一な空乏層を得るためには表面平滑で結晶性の優れた薄膜を作成する必要がある。これもZnOとLBMOのその場成長・イオンビームスパッタ法を開発することによって、綺麗なステップ・テラス成長を示すほどの高品質薄膜成長を実現できた。このような薄膜の面内配向も明らかにでき、その原因が極性格子マッチに依ることが解明できた。 ヘテロ接合のI-V特性は明瞭な整流特性を示すので、立方晶系-六方晶系p-n接合が作成できた。整流比は基板に大きく依存するが、STO基板上では整流比が210にもなる良好なp-n接合が得られたので、大きな成果と言える。また整流比の大きさはある中間温度で極大を現わすので、明らかにLBMOの巨大磁気抵抗効果に基づく、絶縁体-金属転移の振る舞いを反映している。光照射効果は通常のp-n接合特性とは逆の振る舞いを示す。これもLBMOの特徴的な交換二重結合モデルを反映している。 このように、温度と光で変調できるヘテロp-n接合が得られたので、当初の目標のほぼ1/2ほどが達成できている。おおむね順調に計画が進展していると判断できる。今後は磁場変調を確認しなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
今計画している新規p-n接合は4通りの組合せがある。つまり、LSMO/ZnO, LBMO/ZnO, ZnO/LSMO, ZnO/LBMOで、前2者は基板に先にZnOを堆積し、後2者は基板にLSMOやLBMOを先に堆積する。更にそれぞれの組合せにおいて、配向相の組合せが6(2x3)通りあるので、薄膜成長を極めて能率的に行わなければならない。そのためには、配向成長のその場モニターを活用する必要がある。その目的のためにRHEEDモニター系をチェンバーに取付け、成長中に堆積条件をコントロールして、薄膜配向成長をその場制御する。 現状ではInの溶着法で電極付けしているが、加熱することによる薄膜の変質の問題が考えられる。蒸着法やスパッタ法などによって、低温での電極付けを改善しなければならない。 p-n接合の整流特性の、ある範囲での温度依存性は得られたが、もっと詳細に、もっと低温まで測定しなければならない。そのためにはクライオスタット系、特にヒーター部分の改良が必要である。また、低温でのI-V測定時に光照射をしたい。更に、試料の温度をコントロールしながら磁場印加するためには、別のクライオスタット系を用いなければならない。そのための装置準備が必要になる。接合部の電気容量も測定したい。I-Vがスイッチ特性を示したので、その機構を明らかにしたい。強磁性金属相粒子のパーコレーション・モデルを推測しているので、試料のSQUID磁化の測定や、通電状態下でのSQUIDスキャンによって、強磁性粒子分布の電流変化を明らかにしたい。 FETタイプの積層接合試料を作成し、LSMO表面ドレイン電流をZnOゲート電圧でコントロールし、その磁場印加と光照射効果を確認したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
RHEED測定系の電源は初年度の予算で購入した。その他の部品系は、価格が予算範囲で変えないので、H25にはできるだけ予算を使わず、これをH26に繰り越して購入する計画である。 RHEED電子銃やスクリーンなど、RHEED測定に必要な部品を購入する。
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